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公爵令嬢はミステリーがお好き  作者: 古城家康
呪われた龍の息吹
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事件時の取り調べ③

「ではなにか聞きたいことがありましたらいつでも呼んでください!」

「えぇ、そのときはよろしくね」


 失礼します!と元気よく去って行った碧馬を見送り、クリスティアはまず調書と書かれた本を手に取る。

 前紅龍妃の侍女や当時、後宮で働いていた者達へ行った聞き取り。

 ページを捲り捲り見れば、妃の中でまず最初に取り調べを受けたのは蒼龍妃のようだった。


「なにか気になるようなことはありましたか?」

「そうですわね……朝顔様に最後にお会いしたのは蒼龍妃のようですけれど、問診とはなにをなさったのでしょうか?」


 戌の刻(午後7時から9時頃)に蒼龍妃が侍女と共に朱雀宮へと赴く、談笑をしたのちに朝顔の問診を行い青龍宮へと戻る。


「寝る前に当日の体調はどうだったかの聞き取りを行っているのです。後宮には今、常駐の医務官が居りません。前紅龍妃は産後の肥立ちがお悪く、子を亡くされたことで精神的な不安定さもありましたから心配なされた蒼龍妃が毎夜、様子を見るために問診という形で訪問なさっていたのです。青国は昔から医術に長けていましたので」

「朝顔様はなにか薬を服用なさっておられましたか?」

「いいえ、子がまだ乳飲み子ですから影響があってはいけないと薬は一切。ただ蒼龍妃が気持ちが落ち着くようにと香をお渡ししておりました」

「香……ですか?」

「えぇ。私にもですが他の妃達にも調合なさっておいでで……白龍妃は昔に貰った物より効きが悪いと文句を言うくらいその香りを嗅ぐと良く眠れると申していました。一応、残っていた同じ物を検査しましたが特に問題はありませんでした」

「そうなのですね」


 そういえば朱雀宮全体に甘い香りが残っていた。

 あの香りはお香の香りだったのだろう。

 確かに残り香でもそれが良い香りだったことが分かるので、今度調合の方法を教えてもらおうかしらと考えながらクリスティアは再度供述書に視線を落とす。


 蒼龍妃は雨音が気になり少しばかり寝付けなかったので本を読み、子の刻(午後11時から午前1時)には侍女達を下がらせて眠りに就いたとの証言。

 眠る頃にはまだ雨音がしていたとのこと。

 前述の侍女の話でも同様の証言があり、その記述では下がった時間は子二つ(午後11時30分から午前0時)の時間だったとの供述ありという記載を見て次のページを捲る。


 次いで出て来たのは白龍妃の調書だった。


「白龍妃が朝顔様に行った嫌がらせの件は亡くなられてから発覚したのですね」

「はい、亡くなられてからです……取り調べを不愉快に思った黒龍妃が誰かを疑いたいのならばなにかをしていた相手を疑えと言って多く証言をなさいました。そしてその件が応竜帝に知られ……随分と叱られたようです」

「どのような嫌がらせをなさっていたのですか?」

「そうですね、妃同士の集まりの場では通常その一族の色を纏うのがしきたりなのですが……白龍妃は前紅龍妃を唆して自分と同じ色の衣装を着せたり、宴の席では誤った時間を教えたりしたこともあったそうです。ただそういったことを白龍妃にされたということを前紅龍妃は黙っていらしたので……表に出ることはなく。蒼龍妃が知ったものに限ってはあまり大事にしたくないと前紅龍妃からの嘆願もあり後宮内で内々に治めていたようです。お二人の仲の悪さは後宮では有名だったようです」


 開いたページには白龍妃の動揺が激しく、詳しい取り調べが出来る状況ではなかったと記されており……日を改めて取り調べを行う旨が記載されている。


「現時点でもお渡りがないということは応竜帝はお許しになられていないということですか?」

「はい。前紅龍妃が亡くなってしまったこともあって……許しがたかったみたいです」


 謝りたくても謝れない、許されたいけれど許されない。

 白龍妃の不安定な苛立ちはそういったことも原因であろう。


「白龍妃は……次の子が出来ないことで一族から随分と責められていたようです。白族は今、過激派と穏健派が国を二分しています。過激派は前応竜帝時代の恨みを忘れるなと赤族を目の敵にしているので、赤族の妃である前紅龍妃に子が出来たことは余計白龍妃への強い責めとなっていたことでしょう」

「白龍妃は子を亡くした後に授かることはなかったのですか?」

「いいえ……最初の子が亡くなってから何度か懐妊することはあったのですが。ただ初期の段階で流れてしまって……白龍妃は元々お体が弱くていらっしゃいますし、それに応竜帝は子が出来ると子が出来た妃を気遣うことが増えますので夜伽であるお渡りの数が極端に減りますから……子が出来る機会も少なかったのだと思います」


 すなわち今現在、応竜帝は懐妊している黒龍妃の玄武宮で優先的に過ごすことが多く、朝顔の喪に服すという点でも他の妃へのお渡りは無いに等しい。


 子が出来る機会もなく、ただただ一族に責められ続けたのであろう白龍妃。

 そういえば一人の侍女の取り調べでは、白龍妃が普段から一族への不満や不安を吐露しており、子が出来た朝顔のことを羨んでいたという記載があった。


 次いで開いたページには黒龍妃の取り調べの様子が書かれている。

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