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公爵令嬢はミステリーがお好き  作者: 古城家康
呪われた龍の息吹
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蓮池②

「ふん、ならいいが……一人であまりウロウロするんじゃないヨ。何処かへ行くときはワタシか丹黄を呼ぶネ、いいかクリスティー?」

「早く目覚めてしまったものだから……心配をさせてしまってごめんなさい」


 クリスティアの仲裁によって怒りを収めた夕顔。

 勝手に突っかかってきて勝手に話を終わらせる二人を見て。

 王国語でなにを言っているのか分からないということもあり、余計苛立ちを感じて怒りの収まらない白龍妃はクリスティアを見ると小馬鹿にするように鼻で笑う。


「この国の言葉も話せないくせになにしに来たのかしら。そうだわ、あなた傷心の身って言っていたわよね……ならあの噂は本当なのね。婚約者に捨てられるだなんて余程愚かな振る舞いでもしたのかしら?その馬鹿そうな面からして教養なんてものはなさそうだものね」


 嘲るようにして口角を上げる白龍妃は、クリスティアが帝国語を理解していないと思っているからこそ無礼に振る舞う。

 その無礼な振る舞いを夕顔が通訳をしないことも分かっているのだ。

 白龍妃の小賢しさに、落ち着いた怒りのボルテージが再び上がり頬に青筋を浮かべてた夕顔をクリスティアが制すると、ニッコリ微笑む。


「ご心配してくださり、ありがとうございます白龍妃」


 クリスティアのその口から流暢に吐き出されたのは、帝国語であった。


「ですがお聞きの通り、ご心配いただかなくても帝国語を話すことも聞き取りこともなんら不便はございません。昔とても良い先生に恵まれたものですから」

「な、な、な!」

「それにわたくしの行き場が無くなった折りには応帝陛下がこの身を引き取ってくださるそうですわ。なのでそういったところの心配もしておりません。どの妃にしてくださるのかはその時のご寵愛にもよるでしょうけれど……後宮には友人もおりますし、さほど悪い所ではないと思っておりますわ」


 まさか帝国語を聞き取ることも話せるとも思ってはいなかったので青い顔をしてわなわなと唇を震わせる白龍妃。

 クリスティアの横では夕顔も驚いた顔をしている。

 クリスティアが帝国語を話しているのを夕顔ですら初めて聞いたのだ。


「クリスティー様、こちらにいらしたのですね」


 そんな二人が驚く中、夕顔と共にクリスティアを探していた雨竜帝が夕顔が現れた方向とは別の方向から現れる。

 夕顔と手分けしてクリスティア探すのに反対方向から池をくるりと一周してきたらしい。

 険悪な雰囲気で対峙する一同を不思議そうな表情を浮かべて見つめる。


「えぇ、目が覚めたものですから少し散歩をしておりました。ご心配をおかけしてしまったようで……」


 申し訳なさそうに眉尻を下げて帝国語を話すクリスティア。

 その言葉に、雨竜帝は小首を傾げる。


「あれ?もう通訳が必要なフリはいいのですか?」

「ふふっ、わたくしのために可愛い子達が争う姿を見たくないものですから。古今東西、女の争いほど胸を痛めるものはございませんでしょう?」

「確かに……そうですけど」


 ちらりと白龍妃に一瞥を向けたクリスティアになんとなく事情を察した雨竜帝は頷く。


「朝食の支度が整っていますので、戻りましょう」

「まぁ、お夕食にいただいたものもとても美味しかったので楽しみですわ。では白龍妃、大変お騒がせいたしました。次は宴の席でお会いいたしましょう」


 再度身を下げて挨拶すると雨竜帝のエスコートを受けて朱雀宮へと去って行くクリスティア。

 その後ろから付いて歩く夕顔が一度だけ白龍妃を振り返り見ると、自分も驚かされたことはさて置いて、教養がないのはどちらだざまぁみろと言わんばかりにべぇーーと舌を出す。


 白龍妃がその嘲りを受けて、持っていた扇子を庭へと投げ捨てると上がりそうになる苛立った叫びを押さえるように歯を噛み締める。

 夕顔は、先程の小賢しかった姿の仕返しが出来て満足したように、歌いそうになる鼻歌を堪えた笑みを浮かべるのだった。

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