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公爵令嬢はミステリーがお好き  作者: 古城家康
リネット・ロレンス殺人事件
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第一発見者④

「近い!」

「いたっ!暴行罪ですよ王太子殿下!」

「君こそ不敬罪だ!」


 初めて会ったというのにこの男はクリスティアに対して馴れ馴れしすぎる!


 元々ラックは人が多い下町で育ち、その子犬のような性格で人好きのされるタイプなので人との間の距離感はこれくらいが常なのだが、誰もそうとは知らないのでクリスティアを庇うように後ろに隠したユーリはラックをニールの居る方向へと犬猫を追い払うように手を振り追いやる。


 そのやり取りを見ながらやっぱり厄介なことになったと、背中に隠れながらも一国の王太子に向かって公務執行妨害で逮捕してくださいと噛みつくラックにニールは頭が痛くなる。

 署長はこうなることを予測してニールをこの事件の担当にしたのだろう。

 クリスティアが事件に絡むといつもニールの進めたい通りに捜査が進まない。

 それに何度苛立ったことか。

 でもそれを許してしまうのはクリスティアが進んだその先には必ず事件の解決が待っているからであって……。

 表沙汰になっていないものも含めて幼い頃から数多くの事件を好奇心と探究心から解決してきたクリスティアの手腕をニールは認めている。

 きっとこのラックとユーリの騒ぎもクリスティアが止めずに見守っているのだから事件解決に進むための一つの鍵になり得え……ないだろうけれども巻き込まれるのは面倒なので放置しておいてニールはクリスティアの緋色の瞳を見つめる。


「あのなクリスティー、地下牢なんて時代錯誤の代物、警察にはねぇしお前が犯人だとしてもまず取り調べだ。地下牢になんて入れねぇよ」


 突然、砕けた様子で話し始めたニールにラックはギョッと驚いた顔でそのくたびれた顔を見つめる。

 ニールは事件関係者と会うときは相手に警戒心を持たれないよう折り目正しい紳士のように振る舞うことを心情としているのでどれだけ相手が不愉快な人物であっても乱暴な言葉を使うことはない、ましてや相手が身分の高い貴族ならば尚更。


 しかしながらクリスティアに関しては丁寧に相手をしているだけ無駄だと分かっているのだろう、いつも通りの口調にニールは戻す。


「そこはそう口ではおっしゃっていても隠しているのではありませんの?地下牢に付随した拷問部屋とかありませんの?」

「ねぇよ」


 オールバックの髪の毛を苛立たしげに掻き毟りながら地下牢なんて時代錯誤の代物が本気であると思っているのかと呆れた声音でその存在をニールは否定する。


 クリスティアは警察を一体なんだと思っているのか。

 犯罪者を痛めつける拷問官だとても思っているのか。


「今や犯罪者にも人権が適応される時代なのは分かってるだろう。留置場は基本一人部屋で、浮浪者や難民なんかより余程良い部屋での生活が保証されている。それに起訴になっていない被疑者のプライバシーの保護も厳重に行わないとこっちが訴えられるんだ……そんな警察署に地下牢や拷問部屋なんてもんあったら即、対人警察が瓦解するわ」


 そんな恐ろしい物は随分と前に過去の遺物として取り壊されたのだ。


 今はその快適さで不起訴になった者が外に出たくないと駄々を捏ねるくらい質の良い人権に配慮されているのか警察の留置場だ。


 そんな快適空間ではなく、薄暗くじめじめとしたネズミやムカデの跋扈する現実にはない地下牢に行きたいと訴えるクリスティアにそんなに行きたいのならば自分で穴を掘って埋まればいいとニールは軽くあしらう。

 地下牢を作る財力、公爵家にならば余裕であるだろう。

 だがそんな用途不明の地下施設を作れば違法建築となり犯罪になるのでその地下牢を使う前に問答無用で逮捕、クリスティアが望まない快適空間の留置所行きとなるだろうが。

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