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公爵令嬢はミステリーがお好き  作者: 古城家康
リネット・ロレンス殺人事件
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第一発見者③

「ふふっ、あちらにお座りなのがユーリ・クイン王太子殿下で、この度の夜会のエスコートをわたくしがお願いいたしました。そちらにお座りなのがハリー・ウエストです。宰相閣下のご子息で第一通報者となりますわ」


 クリスティアの紹介にユーリもハリーもソファーに座ったまま軽く頭を下げる。

 警察に対する警戒心もあるのだろうがまさに王族と貴族といった態度に、ラックは立ち上がってわざわざ自分達に近寄ってきたクリスティアとは大違いだと少しばかり反感を持つ。

 そのクリスティアはニコニコとしながら二人の紹介を終えるとなにを思ったのか、先程ラックが両腕を出したように自分の両手をニールに向かって差し出す。


「なんだ?」

「ニール、わたくしに手錠を掛けて地下牢にお連れしてくださいな」

「クリスティア!」


 驚き叫んで立ち上がったユーリに唖然とするニールとラック。

 そして大慌てでソファーから立ち上がりクリスティアの横に移動したハリーはその余計なことを言う口を押さえて酷く動揺した高笑いを上げる。


「ははは!冗談ですよニール警部!ラック巡査部長!クリスティーは殺人という凄惨な事件現場を見て酷く動揺しているよういだぁぁっ!!?」


 笑える冗談だと空笑うハリーに口を押さえられたクリスティアは静かに左足を上げるとその尖ったヒールの履いた足をハリーの足の甲に向かって落とす。

 足を踏みつけられ悲鳴を上げたハリーがクリスティアから手を離し、しゃがみ込むと足に穴が空いたのではないかというくらいの痛みに悶える。

 そのハリーの大声にニールもラックもなにが起きたのかと体をビクリと震わせる。


「ク、クリスティー……ッ!」

「あら、ごめんなさいハリー。口を押さえられたので驚きましたの。離れようとしたらあなたの足を踏んでしまいましたわ。ほらあなたのスラリとした長い足にわたくし気付きませんでしたの」


 絶対嘘だ!

 この痛みは偶然足を踏んだ可愛らしい痛みでは無い!


 明らかに意図を持って勢いよく踏みしめたときの痛みだと悪びれた様子もなくあっけらかんとして謝るクリスティアをハリーは恨みがましい涙目で見上げる。


 クリスティアが警察に余計なことを言って不愉快な状況に巻き込まれないよう気を遣っただけなのに!


 酷い扱いだと穴の空いてはいない足の甲をハリーは労るように撫でに撫でる。


「それよりもニール。わたくし第一発見者ですのよ、ご存じでしょう?」

「えぇ、聞いています。随分な目に遭いましたね」

「いいえ、ゲストルームに横たわっていたあのご令嬢ほどの目には遭っておりませんわ。ねぇ、ニール。やはりこういうとき一番に怪しむべきは第一発見者であるべきだと思うのですけれども、どうかしら?」

「それは時と場合によります」

「ではこれはその時と場合によるものだと思うのです。なのでわたくしは一先ず地下牢へと入り、己の潔白をその中から証明したいとそう考えておりますの。どうぞこの腕に縄をおかけください」

「第一発見者が第一容疑者など時代錯誤です!遺体を発見したからという理由でクリスティー様を牢に入れるなんて!そんなこと出来ません!ニール警部そうでしょう!?それでも牢に入れるというのなら僕は抗議します!」

「あらあら、困りましたわ」


 声高々に自分の有罪だか無実だかを宣言するクリスティアの地下牢に入りたくて仕方ないといった様子に、前々から入りたいと言っていたことを知っているニールは当たり前だがそんな提案を受け入れられるはずはないので却下を下そうとしたその隣で、違う意味で牢になんて入れることは出来ないとラックが頭を左右に振っている。


 どの口が抗議などとほざいているのか。


 最初に第一発見者が第一容疑者だと言っていたことなどすっかり頭から抜け落ちているらしいラックはクリスティアの両手を握りしめてると例え国家権力と争うことになったとしても己の正義のために絶対にあなたを守りますっと意気込む。


 クリスティア的には良い感じで懐柔出来たラックに地下牢へと入ることを後押しをしてもらえたらいいなと思っていたというのに……。

 当てが外れてしまい困った顔をするクリスティアと凜々しい顔でか弱き乙女を守るために奮起するラックとの見つめ合う近い距離に、二人に近寄ったユーリはクリスティアの手を握りしめたラックの手を叩き落とす。

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