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公爵令嬢はミステリーがお好き  作者: 古城家康
幽霊屋敷と蝶の羽ばたき
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コレクションルーム③

「一つよろしいですか?」


 恐怖と緊張の訪れた一同の疑惑を制するようにエヴァンが手を上げる。

 彼はサンルームに上がらず、その場で話を続ける。


「実は少し気になったことがあるんです。この屋敷は10年前から空き家なんですよねホームさん?それは本当に10年前からなんですか?」

「あっ、いいえ……違います。この屋敷がいつから空き家なのか正確な年数は実は分からないんです。10年前に近くで行われた大規模な区画整備事業でこの付近を調べるついでに屋敷の存在が明らかになって調べられたみたいなんですけど、その時に持ち主不明の空き家ってことで処理されているのでそこからの記録しかありません。それ以前の記録ではここは本来だったら国の管理する森林になっているはずなんです。でもここから一番近い家の人の話では少なくとも30年前には人が住んでいて、定期的に男が訪れていたって……だからここに屋敷があると近所ではその存在が知られていたんです」

「でも個人の屋敷が建ったということは国の管理からは離れたってことでしょう?土地の持ち主も分からないのかしらシャロン?」

「えぇ、クリスティー。オークションに出す前には登記簿も十分調べられたし、新聞や広告で土地の持ち主は誰なのか、屋敷のことを知っている者はいないのかを広く探したらしいんだけど……誰も名乗り出る者はいなくて、詳しくは分からないの」

「でしたら少なくとも30年以上前からここにはこの屋敷が建っており、空き家だったということですね。実は私が気になったのはこの屋敷にある本は全て30年以上前に出版された書籍ばかりだということです。魔法道具もそう。それより新しい物は一つもありませんでした」


 残された品物達から見てもこの屋敷は10年前からではなく、30年以上前から時を刻んではいないはずだとエヴァンは確信する。


「それにレーニック達、対魔警察がたかだかランタンや投映機の映像程度の魔力を感知してこの屋敷を怪しむことはあり得ません。微弱な魔力であるそれらを一々精査していたらラビュリントス王国にある全ての魔法道具を疑わなければならなくなりますから、まず感知自体しないでしょう。対魔警察がこの屋敷から感知した魔力は微弱ではなかったからこそ、危険を感じて調べに来たのです」


 じっとリアースを見つめるエヴァンの視線を受けながら動揺するわけでもなく。

 リアースはずっとモルフォの日記帳を見つめている。


「30年以上前から誰も住んでいない屋敷の寝室にあなたに良く似た写真があることは最初から違和感でした。親族や他人のそら似であったとしても似すぎです。なので私はあなたが一番最初に捜索したとおっしゃっていた地下室のことを思い出したのです。わざわざそこを避けるように仕向けた言い方をしたのはそこに行かせたくないなにかがあるのではないかと……なので私は皆さんと離れて地下に向かいそこで、巨大な魔力の増幅装置を見付けました」


 漸く、リアースが顔を上げる。

 その緑色の瞳にはなんの感情もなく、ただ告げられた真実を受け入れている。


 エヴァンの言葉を聞いて、クリスティアもそういうことかとやっと合点がいく。

 それは彼が執事の息子ではないという証拠なのだと。


「あぁ、そういう……あなたはミサと同じ魔法道具、モルフォの魔法道具なのですねリアース様」


 クリスティアは零れたように漏れた自分の言葉に一人納得する。


 あなたは私であって私ではない。


 モルフォの日記にあった言葉はまさにその通りなのだ。

 彼は彼女の魔力で作られた魔法道具。


 リアース・クシビアという男は人では無く……バタフライ・モルフォの魔力なのだ。

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