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公爵令嬢はミステリーがお好き  作者: 古城家康
幽霊屋敷と蝶の羽ばたき
368/631

コレクションルーム①

 そうしてそれぞれが探索した部屋から見付けた品物を持って集まったコレクションルーム。


「では皆様、各々が捜索して見付けた物をお披露目いたしましょう」


 一番広い空間である地球儀の飾られたサンルームに立ち、オークションの競売人かのようにクリスティアが皆を見回す。


 なにも手に持っていないというのに自信満々に胸を張るアリアドネと、満更でもないといった様子でクリスティアを見つめるユーリ。

 自分達が探し当てた物こそが探していた物だと信じているロバートと、その隣に寄り添うフランはわくわくとした気持ちを隠しきれておらず少しばかり頬を昂揚させている。

 両腕を組んで不機嫌なシャロンとその隣で肩を縮めて宝箱を大切に抱えるリアースは、シャロンをちらちらと見ては話し掛けられずに肩を落としている日記帳を抱えたハリーとの間に挟まれて随分と気まずそうだ。


 気になることがあると言って何処かへと消えたエヴァンはまだ戻って来ていない。


「おい!まだスカーレット先輩が来てないないぞ!何処にいるんだ!」

「まぁ、エヴァン先生は寝室での捜索中にお姿が見えなくなりましたけれど……一階でなにやら騒ぎがあったようですし、わたくしてっきりカイリ様の元へと向かったと思っていたのですが……ご一緒ではなかったのですか?」

「はぁ!?一階と二階で分かれてお前達を見張るって先輩が言ったんだぞ!僕と一緒に居るわけないだろ!?」

「まさか、まさかそんな!大変ですわ!でしたらエヴァン先生は一体どちらに!?エヴァン先生が忽然と消えてしまいましたわ!わたくしが目を離してしまったばっかりにこんなことになるなんて!どうしましょうカイリ様!」

「お、おい!冗談じゃなくて本気なのか!?だったらこんなことしてる場合じゃない!まず先輩を探さないと!!」


 両手で唇を隠し震えてみせるクリスティアの迫真の演技に、あわあわと慌てだしたカイリ。

 もしかすると何処か知らない隠し部屋にでも閉じ込められているかもしれない。

 いや!もしかすると本物の幽霊がエヴァンを連れ去ったのかも!

 手遅れになる前に救出しなければと焦るカイリとざわめきだす一同だが、エヴァンがなにかを調べに自ら一人になったことを知っているハリーだけはクリスティアの演技力に呆れている。


「おや、皆さんお揃いで。遅れてしまって申し訳ありません」


 そんな茶番を遮るように、件の捜索人であるエヴァンが平然とした様子で現れる。

 何処かを怪我した様子もなく全く無事な姿だが、皆から一斉に注がれる心配そうな視線に、自分が来るまでの間になにか心配なことでもあったのかと小首を傾げる。

 その姿に、騙されたと瞬時に理解したカイリが怒りで顔を真っ赤にしながらギロリとクリスティアを睨みつける。

 その一睨みをものともせずに、むしろエヴァンを心配する優しい心を迎え入れるようにしてニッコリと微笑んだクリスティアは、カイリの震える唇から文句の怒号が吐き出される前に、今度こそ揃った全員へと待ちに待った謎解きの時間がきたことを告げる。


「楽しい余興が今、終わったところですわエヴァン先生。では改めまして、リアース様がバタフライ・モルフォに託された遺言の謎。皆様がそれぞれの部屋で見付けたであろう品物との答え合わせをいたしましょう」

「まずは私達からよ!」


 待っていましたと言わんばかりに声を張り上げたアリアドネがサンルームへと進み出る。

 どうやらサンルームはこの謎解きを解明する者の舞台となるらしく。

 移動する必要はあるのだろうかと頭の片隅に疑問符を浮かべながらも釣られるようにしてユーリもアリアドネの横へと歩み出る。


 だが勇んで前に出たわりには、二人のその手の中にはなにも持たれてはいない。


「私とアリアドネ嬢は客間を捜索したのだが、そこにはある条件の下で発動する魔法道具が飾られていることが分かった」

「そう!そしてその魔法道具を発動すると、寝室で見た写真のバタフライ・モルフォの映像がホログラムで現れて、まるでそこに生きているかのように動き、生活する映像が流れたの!私と殿下が手ぶらなのはそれを部屋から持ってくることが出来なかったからよ!」


 そらみたことか!シナリオにない話しだとしても華麗に推理し、解決してみせるヒロインのポテンシャルは高いのだ!


 そう顎を上げて鼻高々のアリアドネは、自分達が見付けた物こそがリアースが探していた物であり、他の部屋で別のなにかを見付けたとしても……本人の姿が見られる物以上の品物はないだろうと確信している。

 だが当のリアースは眉尻を下げると、申し訳なさそうに口を開く。


「あの……実はその映像はもう見付けていまして……」

「ええっ!?」

「しかも割と最初の頃に……映像は他にも二階の客室やドレスルームにもあります」

「そんな!?」

「では、私達が見付けた物は君が探している物ではないということか……」

「…………はい」


 本当に申し訳なさそうに頷いたリアースに、ショックを受けるアリアドネとユーリ。


 この謎を華麗に解き明かし、いつも高みの見物を決め込むクリスティアの鼻を明かせると意気揚々としていた気持ちは一気に意気消沈となり。

 残念な気持ちにユーリが肩を落とせば、隣のアリアドネはあまりのショックでサンルームに両膝から崩れ落ちる。


「ふっ、私達はいい笑い者ね……いいわ。笑うがいいわ!滑稽な私達を嘲笑えばいいのよ!」

「あ、あの、そんなつもりは……すいません」

「いや……まず君が見付けた物があるのかどうかを聞かなかった私達にも非はある」


 自身へと悲痛な嘲りをするアリアドネに、先に伝えておけばよかったと謝るリアース。

 その可能性を排除していなかった自分達も悪いと、ユーリは頭を横に振る。

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