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公爵令嬢はミステリーがお好き  作者: 古城家康
リネット・ロレンス殺人事件
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第一発見者①

「やっぱりこういうとき怪しいのは第一発見者ですよね」

「……時と場合によってはな」

「ご令嬢同士の意地の張り合いとかあるんじゃないですか?私と同じ色のドレスを着るなんてこの身の程知らずめ、やっておしまい!的な感じで興奮した取り巻き達がこうぐさっと」

「たかだかドレスの色でか?パーティーでの貴族令嬢の嫌がらせなんてせいぜい嫌味を言うかドレスを色つきの飲み物で汚して帰らせるのが関の山だろう」

「警部、知らないんですか?エルジェーベト事件。遙か昔ラビュリントス王国で起きたとされる若さに嫉妬した伯爵夫人が自分の娘とその友人達をパーティーに招待して切り刻み、その血をバスタブに溜めて入ったっていう事件。嫉妬は凶悪な事件を引き起こす要因になるんですよ……まぁこの事件は都市伝説なんですけど」

「大衆小説を警察が信じてどうする。想像は大事だが証拠はもっと大切だ。現実に起きていない事件を参考にして空想を広げるくらいなら現実に起きた事件の中から証拠を探し出せ」

「……はい」


 事件現場で晒した痴態を払拭しようと意気込んでいるのは分かるが都市伝説を引き合いに出して捜査をしようなんて馬鹿馬鹿しいにもほどがある。

 もっと現実を見ろと尤もな忠告をして、悄気るラックと共にニールは事件現場からさほど離れていない別のゲストルームの扉の前へと立つ。


「いいかラック、この先に居る令嬢は些か面倒な令嬢だ。俺が良いというまでは事件について余計な事を喋るなよ」

「えっ?ちょっ!警部!」


 クリスティアを前にすると誰も彼も余計なことを話してしまう。

 第一発見者を疑うならば余計に自分が話す言葉に気を付けろと扉に向かって手を上げたニールにどういうことかと分からずラックは焦る。


 しかしそれを無視したニールはコンコンっと扉をノックする。


「中央警察署のニール・グラドです」

「あぁ、入ってくれ」

「失礼します」


 ニールの低い声に反応するように扉の中から良く通る若い男性の了承の声が響き、ニールは躊躇わずにドアノブを掴み扉を開く。


 事件現場とそう変わりない広さの部屋は重厚で趣のある家具で埋め尽くされている。

 どうやらここはゲストルームではなく応接間であるらしい。

 中央にクラッシックな花柄の二人がけソファーがL字に、同じ柄の一人がけの背もたれ椅子が対面に二脚置いてあり、光沢輝く机が中央に設置され上に人数分の紅茶のカップが乗っている。

 左の壁には白を基調とした蔓の彫り込まれた暖炉。

 上には燭台、時計、絵の描かれた皿。

 壁には絵画が数々が掛けられており、華美さはないが高価な部屋であることは窺い知れる。


 扉に対して横に向いているソファーにはハリーが背もたれに腕を置きニール達を見るように横へと顔を向け、扉の正面にあるソファーには張り詰めた重苦しい雰囲気を纏っているユーリと酷く不機嫌そうに頬を膨らませているクリスティアが並んで座っていた。

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