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公爵令嬢はミステリーがお好き  作者: 古城家康
何故彼女は赤い悪魔となったのか
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事の顛末①

 あれから数日経ち、対人警察署で行われた犯人の取り調べで発覚したことは、殺されたのはやはり王宮で働いていた臨時の庭師だったということ。


 庭師としての腕が良く、王宮で働く前も日雇いなどをして色々な貴族の邸に入り込みお金になりそうな情報を盗み出しては自分を殺した男と結託してその情報を欲しがる相手に売って生活していたらしい。

 この度、王宮の庭師の募集に参加したのはとある人物に纏まったお金で雇われたこの男が庭師に話を持ち込み間者として忍び込ませたそうだ。


 庭師という仕事は王宮の外にならば何処に居ても怪しまれないし、出入りする貴族の情報やある程度の噂話も手に入りやすかったのだろう。

 今まで自分に従順に従い情報を流していたあの男は殺されたあの日、突然もうこの仕事をやりたくないと言い出したのだそうだ。


「あの悪魔が王子様の婚約者になるのは内定してるようなもんだっただろ?そんなときに思いもよらずあの庭師を気に入ったって話が耳に入ったんだ。俺達のように情報を仕入れる者にとったら渡りに船だ。王子様の婚約者の情報なら大金を払ってでも欲しがる奴らなんていくらでもいる。だからもっと気に入られて今度は公爵家に忍び込めって命じたらあいつはやりたくねぇって言い出して……もしこれ以上、自分に関わるなら今までのことを全部警察に暴露してやるって!俺が拾ってきた恩も忘れやがって脅してきやがって!」


 だから殺してやったんだ!

 その罪がまるで自分のせいではないというように訴えた男。

 庭師の手筈のもと花を卸す業者に紛れて王宮に出入りしていたこの男は、その時に庭師の男と接触し情報を得ていたのだが口論となり殺害……そしてクリスティアの言うとおり、監視の厳しい王宮から遺体を連れ出すことが出来ず仕方なしに池へと沈めたのだそうだ。


 男が逃げなかったのは殺した男を隠しているタイミングで別の庭師に声を掛けられてしまい、咄嗟に殺した男の名前を名乗ったせいで帰るに帰れなくなってしまったから。

 男と庭師の男は背格好も似ており、なるべく目立たないように仕事をしていたせいで成り代わっても疑う者はいなかったのだ。


 臨時とはいっても住み込みでの仕事、割り振られた部屋に庭師が戻らなければすぐに騒ぎとなるだろう。

 ならば契約が終わるまで大人しく庭師として働いたほうが事件の発覚が遅れると思って残っていたのだそうだ。

 ガーデンパーティーが無事に終わり王宮を去ることが出来れば……全て上手くいくはずだったのにと告白を終えた男は項垂れ頭を抱える。


「くそっ!腐った腕を投げつけるなんて!あのいかれた悪魔め!」


 花の香りがするのだと男は言った。


 自分が殺した男の腕が毎夜毎夜、花の香りを連れて現れては首を絞めに来る。

 そんな悪夢を見ているのだと人一人を殺した罪に苦悩する男は独房の中、自分を探す腕の夢をこれから先も永遠に見続けるのだ。


 種明かしとして、実はクリスティアが池で見付けたふりをした腕は本物ではなく精巧に作られた偽物でエヴァンに作ってもらった物だ。

 本物の遺体に損壊はなかった。

 ユーリがあの水の庭園で事件を知ったときには既に殺人犯人が誰なのかはクリスティアは知っていたのだ。

 あれはただあの男を追い詰めるためだけの余興。


 この広い執務室に呼び出され、父親からあらましを聞かされたユーリは騒ぎを見ていた他の賓客達にもトラウマとなっただろうと溜息を吐く。

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