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公爵令嬢はミステリーがお好き  作者: 古城家康
何故彼女は赤い悪魔となったのか
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教会での出会い①

「それでわたくし前世では思うように体が動かない生活でしたでしょう?ですからこういった物は大変便利だと……」

「…………」


 白いレースの日傘がゆらゆらと揺れ楽しそうな声が響いている。


 クリスティアとエヴァンの作品達を見に行くと約束してから5日後に訪れた教会。

 大変便利になった新しい教会内の案内を意気揚々として買って出てくれた司教であるゴーンによって動く床にエレベーター、天上から降り注ぎ内部を照らす通常とは違う魔法道具の照明……そんな作品達を感心しながら眺めるユーリの横で、毎度毎度のことながらその道中至る所でクリスティアがいつものおかしな前世の話を披露している。


 どうやらエヴァンの作品はクリスティアの前世を刺激したらしく、話が止まらない。


 それを止めても無駄だと悟り、右から左へと受け流すユーリと違い、時間を気にしながらもニコニコとゴーンが辛抱強く聞いているのはクリスティアの話を遮ろうにも教会への献金が多いランポール家のご令嬢を無下には出来ないからだろう。

 これから予定でもあるのかその表情には焦りの色が有り有りと浮かんでいるのだが、自分の話に夢中で気が付いていないクリスティアは前世の話を遮らずに聞いてくれる数少ない人物に嬉々としている。


「……クリスティー、もうそろそろお昼の時間だから帰ろうか?ゴーン司教も忙しいだろうし……」

「まぁ、わたくしそれほど長いことお話ししてしまいましたのね。司教様はお話しをお聞きになるのがとても上手でいらっしゃるからわたくしつい話しすぎてしましましたわ」

「い、いいえ。とても楽しいお話しをお聞きできて私も有意義でしたよクリスティー様」

「そんな、でしたらもっと!」

「クリスティー!あれ見て!」


 永遠と続きそうなクリスティアの話に仕方がないので助け船を出すつもりで庭園に新しく設置されたスプリンクラーをユーリが示せば、それにクリスティアの興味が注がれたところで、ユーリはゴーンにさっさと行くようにと目配せをする。

 クリスティアの長い話から開放される喜びが溢れた瞳でゴーンがユーリに一礼するとそそくさと去って行く、その姿に苦笑いしていれば入れ替わるようにして一人のカソック姿の司祭が足早に近寄ってくる……。(ちなみに司教と司祭の衣服の違いはミトラを被っているのか否かで判断出来る)


 この人物がゴーンの代わりにクリスティアに捕まったら大変だ……。


 追い払おうと思って近寄るその姿を見ていれば、それは司祭ではなく、司祭の格好をした魔具師であるエヴァンであることに気付く。

 どうして彼がこんな所に居るのか、というかなんで司祭の格好をしているのか……その疑問を口にする前に迷わずクリスティアへと近寄り頭を下げたエヴァンに、クリスティアが声を掛ける。


「問題はございませんでしたかエヴァン様?」

「えぇ、首尾良く。いやぁ、久し振りにこの格好をしましたが居心地悪いですね」

「なんで……司祭に戻ったのエヴァン?」

「いえいえまさか!今日はお嬢様に頼まれまして、たまたま残していた司祭の服が役立って良かったですよ。物が捨てられないタイプでして……どうぞ、こちらを」

「ご無理を言ってしまって申し訳ございません。あの子に会うためには聖職者の免許を持っている者でないと少し難しかったものですから……ありがとうございます、エヴァン様」


 教会はどのような者も差別なく受け入れているのと同じように従事する者も制限なく受け入れているのだが、司祭以上の聖職者は免許制になっている。

 聖職者には様々な制限があると同時に優遇もあるのでその優遇を私益として使用しない相応しい者であるようにと、まず見習いを5年から10年従事した者で上位階に属する者の推薦があれば試験を行い、通過すると上位階の免許が発行されるのが一般的だ。


 エヴァンは一時期司祭だといっていたので司祭の誰かの推薦を貰いその試験を受け免許を発行されているのだろう。

 一度発行されると余程の事が無ければ取り消しということはない。

 真新しいカソックを見ればエヴァンがすぐに司祭の職を辞したことが伺える。


 彼を推薦した者はさぞ落胆したはずだ。


 クリスティアの日傘をエヴァンが受け取り代わりに渡されたタブレットには一体なにが映っているのか、眉を顰めながらそれを真剣な眼差しで見つめるクリスティアのことが気になってユーリが覗こうとすれば……見る前にエヴァンへと返される。

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