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公爵令嬢はミステリーがお好き  作者: 古城家康
何故彼女は赤い悪魔となったのか
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ランポール邸の客間にて③

「何故ここに……?というかその服装は、ランポール家のメイドになったのか?」

「はい、事情がありまして……旅行以降クリスティーの。あっ、クリスティー様のメイドになりました」

「……そう、だったのか」


 最近やけにこの平民の子をクリスティアが連れ回していると思っていたらそういった事情だったのか。

 そういえば冬の旅行から帰ってきたときにメイドがなんだと言っていた気がするが、エルと小競り合いをしていたのでユーリはあまり聞いていなかった。


 ランポール家の者達に仕える使用人といえば滅多と変わることがないので雇われることすら狭き門。

 数年に一度、厳正な書類審査のもと行儀見習いとして貴族の令嬢を数十名受け入れてはいるがそれすらも大変人気で。

 毎年、ランポール邸の入り口から門まで長い長い行列が出来るほどだ。


 それなのにこの少女はクリスティアに気に入られたという理由だけであっさりとクリスティア付きのメイドとなったのだろう。

 ルーシーが鋭い視線を向けるのも頷ける。

 その視線の内にはクリスティアに気に入られ羨ましいという嫉妬心も混ざっているはずだ。


 この幼げな少女が自ら行儀見習いを望んでクリスティアに頼み込んだとは思えない。

 頼み込まれただけでクリスティアが自分付きのメイドにするはずもないし。


 結局、クリスティアに捕まってしまったらしいアリアドネにユーリはなんとも言えない微妙な……同情心の溢れた顔をする。


「まぁ、なんだ……そう気負わずに。私とは学友として接してくれると助かる……良かったらクリスティアが来るまで話し相手になってくれないか?」

「えっ、あっ、はい!」


 図書室でクリスティアに紹介されたとき、助けてやれなかったことへの罪悪感が沸々と湧き上がり、せめてルーシーの嫉妬心からは守ってやれればと椅子に座らせれば照れたようにアリアドネはソファーへと座る。


 彼女にも飲み物を……そう、ルーシーへと頼めば畏まりましたといいながらアリアドネに殺気を向けているのは気のせいだと信じよう。

 庇うつもりが余計、待遇を悪くしてしまうかもしれない。


 失敗したかもしれないという湧き上がる気持ちを抱えたユーリは嬉しそうに笑うアリアドネを見て痛くなる胸を押さえる。


「学園はどうだろう、不便なことはないだろうか?」

「はい、特に問題なく過ごしています!」


 どんどんと積み上がっていく気がするアリアドネに対する罪悪感を振り払うように会話を振れば元気な返事にそれは良かったとユーリは笑む。


 やはり貴族と平民とでは目には見えなくても隔たりがあることは感じている。

 貴族としての矜持が高い者達からそれは特に感じることでもあるので、それが軋轢になって互いの関係が悪くなることをユーリは一番危惧していた。


「あっ、ただ婚活への圧が凄いっていうか……皆さんギラギラしてますよね」

「あぁ……」


 貴族は特にそうかもしれない。

 アリアドネは可愛らしい顔をしているので声は掛けられるだろう。


「この間なんて私のこと貴族だと思ってる人に言い寄られたんですけど、平民だって知ると逃げていきました。私が可愛いのは分かりますけど身分で人を判断するなんて、こっちが願い下げって話ですよ」


 キャラデザの至高といわれたヒロインだ。

 言い寄りたい気持ちは分かる。


 そう話すアリアドネはなんだか自分ではな人物のことを話しているようで……ユーリは少しばかりの違和感を覚えながらも、自意識が強い子ではあるがこの容姿ならそれも納得出来ると苦笑う。


「大目にみてやってくれ、彼ら彼女らは全て家門を背負っているので親からの期待もあるのだろう。ただあまりにも無礼なことをするようなら私かクリスティアに相談するといい」


 それはとても強力な相談相手となるだろうけれども、それはそれでアリアドネに無礼を働いた相手が可哀想というか……。

 アリアドネとて鬼ではないので気持ちだけ有り難く受け取ることにする。

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