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公爵令嬢はミステリーがお好き  作者: 古城家康
リネット・ロレンス殺人事件
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ゲストルームでの殺人⑥

「取り敢えず会場から誰も逃がさないように主催者に話をしたほうがいいかな?」

「あらハリー、それはもう遅いと思うわ」

「えっ?」

「わたくしがゲストルームに入って殿下が迎えにいらっしゃるまでに一時間経ったか経ってないかくらいですわ。おそらく彼女が殺されたのはわたくしがゲストルームに来てそう時間が経っていないくらいでしたので、今の話し合いの時間を考慮しても逃げる時間は十分にありますわ」


 ゲストルームにある21時10分を指す置き時計の針を見ながらクリスティアが残念がる。


「どうして殺害したのが君が来てすぐだなんて分かるんだいクリスティー」

「簡単なことですわ、誰かがこの部屋で何かを言い争うような声を夢うつつでわたくし聞きましたの、まだ完全に意識を失う前でしたわ。揉め事ならば他所でやってくれないかしらと思って意識を失いましたので彼女が殺されたのはその後でしょう」


 ならば逃げる時間は十分にあったはずだ。

 挨拶だけして別の夜会に向かった者達も居るだろうし、既に帰宅の途に就いた者達も居るだろう、今更夜会に来ている者達を閉じ込めたところで無意味。

 人によっては警察に捜査されることを極端に嫌う者も出て来るので大事にすれば夜会に来たこと自体を隠す者達も出てくる、それは殺人犯人を取り逃がすことになりかねない。

 それならば貴族は招待状を持参で来たのだろうから主催者側の招待リストを元に捜査するのが妥当だろう。

 新規で雇ったメイドやボーイは紹介所からのリストを審査すれば良い。

 今現在、邸に残っている者達を閉じ込めることは得策ではないだろうと諭すクリスティアにハリーも残念ながら納得すれば、隣でなにかを考え込んでいたユーリがハッと思い出したように声を上げる。


「そうだ!ハリーに会う前に男とぶつかりかけたんだ!コートで身を隠した明らかに怪しい奴だった!手も赤く染まっていたし!そいつだったら探せばまだ会場に居るかもしれない!」


 廊下の角でぶつかりかけたユーリから身を隠すようにしていた不審な人物。

 あの染まっていた手の色はもしかして本物の血の色だったのかもしれない。

 ユーリが向かう方向から来たということはこのゲストルームの方向から来たということだ。

 現状一の容疑者になり得るそいつを捕まえればいいと意気込むユーリにクリスティアは小首を傾げる。


「お相手のお顔を見られたのですか殿下?」

「いや、シルクハットを目深に被っていて顔は見ていない」

「コートを着ていたんだよなユーリ?」

「あぁ」

「お顔を見られていないのならばどの殿方かの判断はお付きになられないでしょうし、コートを着ていたのでしたらもうご帰宅されているのではないでしょうか?」


 クリスティアの疑問に一瞬沈黙のちに鬼の首をとったかのように意気込んでいたユーリの気持ちは急速に鎮火していく。

 そして顔を片手で押さると蚊の鳴くような声で、そうだな……と一言呟く。


 それはそうだコートを着ていたのだからぶつかった相手は帰る準備をしていたということだしその帰れる姿を見てユーリは羨んだではないかと自分が殺人犯人を目撃したかもしれないことに興奮して抜けていた事実を思い出しこれで犯人を捕まえられると気を高ぶらせた自分が恥ずかしくなる。

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