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公爵令嬢はミステリーがお好き  作者: 古城家康
リネット・ロレンス殺人事件
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ゲストルームでの殺人④

「ですがハリー、その推理の欠点といたしましてはわたくしと彼女がもみ合ったにしてはこの部屋の状況は些か綺麗すぎないかしら」

「……確かに」


 もしクリスティアが襲われてリネットから逃げ回ったのならば抵抗するときにソファーのクッションを投げたり、机を倒して進路を妨害したり、三脚テーブルや一人がけの椅子を武器にクリスティアならば戦いそうだがそういったものの乱れや壊れは一切無い。


 ユーリとハリーが来る前にクリスティアが片付けたと仮定することも出来るが、そうだとしてもユーリとクリスティアが離れて一時間経ったか経ってないかくらいだ。

 リネットに襲われたのを逃げ回り、家具を投げたりして取っ組み合いをし殺す、そして乱れた家具を綺麗に片付けるというのをそんな短時間で一人で出来るだろうか。


 というかクリスティアは武術護身術を習っているので自分の身を守る術を心得ている。

 技術的に言えば初級騎士ならば武器なしで中級騎士ならば武器を持って余裕で勝つくらいの技量を持っているので、たかだか自棄を起こした細腕の貴族の令嬢相手に負けるはずはなく。

 殺してもなんの利益もない自分より弱い相手に対して殺人を犯すくらいならば相手を昏倒させ縄でグルグル巻きに縛り付け、優雅に紅茶を一杯頂き迎えに来たユーリとハリーに襲われたから返り討ちにしたのだと悪びれもせず状況の説明をして怒られるというほうが現実的だ。


 それにもしロレンス卿のことが原因でリネットがクリスティアを襲うつもりだったのならば相当感情的になっていたということだろうから部屋からは、お前のせいでーーっだとか殺してやるーーっだとか罵声や悲鳴、家具が倒れる音などが聞こえて然るべきだ。

 夜会で人の出入りも多くユーリもハリーもここに来るまでの途中で忙しそうに立ち回るメイドやボーイと幾人かすれ違った。

 そういった者達に気付かれずに静かに騒動を起こすのは難しい。


「ロレンス卿の令嬢がわたくしに殺意を抱く理由はありますでしょうがわたくしが彼女に殺意を抱く理由はございませんわ。顔を知っているといってもお話をしたのはお会いしたお茶会で二、三度ほどですし……お姿は色々なパーティーで拝見したことはございますけれどもそれでご懇意にさせていただいた記憶はございませんのでわたくしが彼女を殺す動機はどこを浚ってもございません。とはいえ部屋の状況から見るにわたくしが襲われたとも言い難いですし……あらそうなると誰がこの惨劇を引き起こした殺人犯人なのでしょう?」


 クリスティアも自分がもし犯人だとしたらこの状況で考えられる殺害動機をリネットの遺体を見つけてから最初に考えていた。


 リネットが襲ってきた?


 にしては部屋が綺麗すぎる。


 反撃した痕跡すらないのはおかしい。


 睡眠薬で朦朧としていて反撃できなかったのだとしたら?


 それならばあのソファーの下で横たわっていたのはクリスティアのはずだ。


 クリスティアがリネットを襲った?


 では動機は?


 クリスティアはリネットのことを知っていても名前を覚えていなかったのだ、そんな人物を襲う動機は何処にもない。


 クリスティアが事件を起こしたのならば通らない筋道がいくつかあり、どう考えても自身が殺したわけでもその記憶がなくなったわけでもないと判断出来そうだし、証人や証拠が無いとしてもクリスティアが睡眠薬を飲んだのは飲み物に混じった独特の味と深く眠り込んだことといい紛れもない事実なのだ。

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