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公爵令嬢はミステリーがお好き  作者: 古城家康
何故彼女は赤い悪魔となったのか
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マティス家のパーティー③

「私が客間から離れる前には像があったのを覚えております」


 まず手を上げたのは一人の男爵令嬢だった。


 ここぞとばかりに家格が上のランポール家へと取り入ろうとしているのだろう。

 エラが責められていたときには見て見ぬ振りをして嘲っていたはずの者達はそれをきっかけにして、各々の記憶を呼び起こし、ああだったこうだったと口々にクリスティアへと訴える。


 自分の舞台を楽しんでいたはずなのに掌を返した観客達。


 子爵令息などこの場においては取るに足らない存在なのだと、あからさまな皆の態度の変化をジョイは苦々しげに眉を顰め見つめている。


「少し前に室内の清掃及び夜会のための模様替えがありましたよ、その時にそちらのメイドさんは確かに居ませんでしたよ」


 何処かの家門の令息が手を上げる。


「客人は皆、模様替え前に別の客間へと案内したので作業しているメイドは見ていないはずです。模様替え前は確実にあったと断言いたしましょう」


 ジョイがそれに反論する。


「ミスター・マティスが別の客間へとご案内なさったの?」


 クリスティアが問う。


「いいえ。部屋の模様替えへを楽しみにされるようにとお伝えをして皆を送り出し、メイドが案内しました」

「まぁ、そうなのですね……」


 ピィピィと囀る小鳥達の纏まらない証言を困ったように聞き入るクリスティアに、子供の推理ごっこでなにが分かるのかとジョイが奪われた主役の座を取り返そうと口を挟む。

 それを聞くとクリスティアは少しだけ考えるように俯き、緋色の瞳を悩むように横へと向ける。


「では、その間の出入りはメイド達だけだったということになりますわね。ミスター・マティスの推理では使用人が怪しいとのことですので聖女像が盗まれたのはその頃だと断定してよいでしょう。あなたはその時、どちらにいらしたのかしら?」

「わたくしの担当は広間ですので、その時間はそちらにおりました」

「そんな馬鹿な!」


 こういったところがジョイの浅はかなところだ。

 おそらく午前中にこの部屋でパーティーの準備をするエラを見て午後の模様替えも同じようにエラが担当するだろうと思い込み事件を起こしたのだろう。

 だが、午前中の準備は人手が足りないからとたまたま駆り出され手伝っただけで、エラの担当はずっと広間だった。


「聖女像が無くなったという時間に広間に居たのならばあなたを目撃した者は数多くいらっしゃるでしょう。有力な犯人候補者からは外れるということです。では、犯人は誰なのか……今、そのときに居たメイド達は全員この場に?」

「は、はい。おります……模様替え後にそのまま皆様のお世話に回るように指示しておりましたので」


 エラに罪を着せられなくなり目に見えてジョイが焦っている。

 その様子を横目に見ながらも居ないとは言えず、メイド長が怖々と室内にいるメイド達をクリスティアの前へと集める。


 エラを呼びに来たのだ、メイド長はジョイの企みを初めから知っていたのだろう。


「望みは薄いでしょうが、まずは皆のポケットの中を確認いたしましょう。ルシア」

「畏まりましたクリスティーお嬢様。ではでは皆さん、まずエプロンをお脱ぎになっていただけますでしょうか?」


 クリスティアの提案は忠実に仕事をこなしていた者達からすれば屈辱であるだろう。

 メイド達から不満のざわめきが起こるものの公爵家に仕える格上のルシアから促されれば拒否が出来るわけもはなく。

 仕方なくエプロンを脱ぎ、黒いワンピースにあるポケットを面へと引っ張り出す。

 それをルシアが一人一人と確認するが、誰のポケットの中にも聖女像は入っていない。


「まぁ、ずっと部屋に居たわけではないでしょうから出入りの間に何処かに隠すことも出来たでしょう」

「同じように担当ではない者が忍び込んで聖女像を盗むことも出来たでしょうね」


 エラをチラリと見て勝ち誇ったように口角を上げるジョイ。

 そんなジョイを見つめていたクリスティアはニッコリと幼さを全面に出したかのような無垢で無邪気な笑みを浮かべる。

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