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公爵令嬢はミステリーがお好き  作者: 古城家康
リネット・ロレンス殺人事件
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ゲストルームでの殺人③

「なんだ?」

「どうぞ縄を……自首いたします」

「なんでだ!?」


 第一容疑者となりえるクリスティアからのこの状況では当然ともいえる自首。

 ユーリとハリーが現れて丁度良かったとか言うものだからてっきり現状の濡れ衣への打開を共に模索するつもりなのだと思っていたというのに……全然解決になっていない解決法を示されてユーリが驚き叫ぶ。


「クリスティー、取り敢えず落ち着こう」

「わたくしは落ち着いておりますわハリー。あなた達こそ落ち着きなさいな」


 いや、何度も言うようだがこのような状況で逆に何故クリスティアが落ち着いていられるのかが分からない。

 自首をするなんて顔には見せずとも実は混乱しているのではないかとハリーは疑うが、この中で一番落ち着いているのは自分だと言いたげにクリスティアは不満を声音に表す。


「君は本当に殺していないんだよねクリスティー?」

「えぇ、殺人を犯したという記憶が無くなっていないのならば」

「ならあの死んでいるご令嬢が誰か知っているかい?」

「えぇ、先程わたくしがお連れしたロレンス卿のご息女ですわ。お名前は確か……」

「リネットだ、リネット・ロレンス男爵令嬢。やっぱり……それは君の不利になることは分かっているねクリスティー」

「どういうことだ?」


 宰相の息子であり将来のために父親の手伝いもしているせいか貴族の当主とその配偶者や子の名前や顔、大体の人となりを全て把握しているハリーはクリスティアが遺体の女性を知っていることに頭を抱える。

 遺体が誰か知らなければまだ救いようがあったというのに、よりにもよってクリスティアはそれが誰か知っているのだ。


 それは大いに問題になり得ると絶望感漂う空気を纏い示唆するハリーに、クリスティアはハリーが言わんとするところを理解してふふっと笑う。


 流石宰相の息子、頭の回転が速く色々と考える。


 普段の浮薄さは鳴りを潜め、友人のために誰に何を聞かれても筋道のある打開策を頭をフル回転させて考えようとするハリーに、邪魔にならないようどういうことなのか一人理解していないユーリにクリスティアが説明をする。


「殿下、ハリーはこう言いたいのです。ロレンス家の恥を公衆の面前で暴き立てご令嬢の前途を奪ったのは紛れもなくわたくしです。あのようなことがなければ醜悪な噂が広まらないよう内々でロレンス卿の事件を処理することもできたでしょうが……まぁご覧の通りそうはならなかったわけですから、ご令嬢が逆恨みをしてわたくしに襲いかかってきたとそう考えるわけですわねハリー」

「この状況ならそれが一番ありそうに見えるだろう?」


 そしてもみ合う内にクリスティアがリネットを誤って殺してしまった正当防衛というのが簡単で無理なこじつけのない事の顛末だ。


 そうだ、ロレンス卿だって自分が妻を殺したことを忘れていたのだ。


 クリスティアの言う睡眠薬を飲まされたのだという証拠のない訴えより、リネットに襲われたショックで事件前後の出来事を忘れてしまったというほうが曲がり道のない真っ直ぐな筋書きに見えるだろう。

 大の大人が己が犯した罪をその衝撃によって忘れてしまうこともあるのだから、それより遙かに幼い少女であるならば忘れることもまた他の記憶を作り出すことも道理であろうとそんな稚拙な筋道が出来上がる。

 クリスティアならば自分が犯した犯罪を忘れるなんてことは絶対にあるはずがないが、だがそれをクリスティアを知らない人物達が信じられる状況ではないのだ。

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