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公爵令嬢はミステリーがお好き  作者: 古城家康
リネット・ロレンス殺人事件
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ゲストルームでの殺人②

「まぁ、それは冗談といたしましてもおそらくわたくしが飲んだ飲み物に睡眠効果のある薬でも入っていたのだと思います。飲んだときに少し独特の甘さと苦みのある味がいたしましたから」


 では一体クリスティアになにが起きたのか。

 普通、死体と二人きりになるような状況で当てはまる答えは大体において一つしかない。


 彼女が殺人を犯した殺人犯人であるという場合だ。


 だがユーリもハリーもそんなことは考えすらしない、クリスティアに少しでも関わったことのある者ならば彼女が殺人など……ましてやこのような自分がやりましたと言わんばかりの分かりやすい犯罪など犯すはずはない。


 お二人が睡眠薬の件を信じるならばと事も無げに言うクリスティアだが二人には信じるも信じないもないのだ。

 クリスティアがこんな稚拙な犯罪を犯すよりかは睡眠薬を飲まされたというほうが巧妙で真実味があるというだけで、彼女が殺人犯人だとは疑いもしないユーリとハリーは驚きと共に引っかかりを覚える。


「飲み物から変な味がしたのかクリスティア?」

「えぇ」

「変な味がしたのに飲んだのかいクリスティー?」

「えぇ」

「「変な味がしたのに?」」

「だからそう申しておりますわ殿下、ハリー」

「「何故、飲んだんだ!?」」


 吐き出すなりなんなりすれば良かったのに何故飲み込んだのか!


 記憶が正しければクリスティアが飲んだ飲み物はユーリが差し出した炭酸水だけだ、だがクリスティアはそれを平然と全て飲み干していた。

 そういえば飲み物を口に含んだ一瞬、愉快そうな顔をしていた……そこで不愉快な顔をしなかったあたりクリスティアらしいといえばらしいが、だが同じ盆から受け取ったユーリにはなにも起こらなかった。


 もしかしたら夫人達との歓談中になにか他の物を飲んだのだろうか、ならばそちらに睡眠薬が入っていたのかもしれないが……。

 どちらにしろ味がおかしいと思った時点で飲むのを止めていればこんなことにはならなかったのに……ユーリとハリーの同時の問いと突っ込みを危機感を全く感じていないらしいクリスティアは楽しそうに拍手で迎え入れる。


「まぁお二人さんったら長く共に過ごしているせいか息ピッタリ。勿論それはきっとなにかしらのことが起きるだろうと予測いたしましたので飲み干しましたの、ほら現に起きましたでしょう?」

「なぜなんだクリスティア!?」

「事態は深刻なんだよクリスティー!」


 予想通りですなんて暢気に拍手を止め合わせた掌をソファーに隠された死体へと示すように向けてみせるクリスティア。


 睡眠薬に気付いたことも、なにかが起きるということを予測していたことも全て満足のいく結果だ。

 起きる出来事が殺人だとは思わなかったけれども、事件は起きそれに十分巻き込まれることとなったことにユーリとハリーの焦りはなんのそのでクリスティアは自慢そうに胸を張る。


「それで殺人犯人にさせられるかもしれないというのに!君にはもっと危機感というものがないのか!?」

「殿下、過ぎたことを悔やんでも過去には戻れませんわ。今は未来に向けてどう対処するかの話し合いをなさるほうが建設的だと思います」


 それはそうだが何故一番に混乱しても良い人物から言い聞かせられなければならないのか!


 もっとこう普通ならば悲鳴の一つでも上げて慌てふためくものではないのか!


 湧き上がる苛立ちのような焦りのような気持ちをクリスティアにぶつけたところで平静とした態度と返事しか返ってこないので、ただただユーリはそれを消化できずに胸に抱えたまま頭を掻きむしりクリスティアの尤もな提案に、この先の対処をどうしようかとこの場に居る三人で苦々しい気持ちで考えようとすれば……クリスティアはなにを思ったのか自分の両腕を合わせてユーリに向かって差し出す。


 その黒い手袋に覆われた細い両手首になにか良い案があるのかと見つめたユーリは訳が分からず眉を寄せて訝しむ。

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