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公爵令嬢はミステリーがお好き  作者: 古城家康
双子祭りの生け贄
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帰路②

「私はもう絶対に事件になんて関わらない!死体を見るなんて二度とごめんよ!」

「自らが犯人で無い限りは関わろうと思って関われるものではございませんわ」

「そうだけど!ていうかなんであんな残虐な死体にしたのよ!」

「あれほどインパクトがありますと誰しも他のことを調べようという気にはならないものでしょう?鍵のことがありましたからあの場で詳しく調べられると困りますもの」


 確かにそうだけれども!


 お陰ですっかりトラウマだ。

 この一週間ずっと悪夢にうなされたではないか。

 ブスッとふて腐れるアリアドネはそうだっと一つ思い出したことをクリスティアに訪ねる。


「ねぇ、そういえば帰るときにアメットさんが聞いてたけどクリスティーはいつからマーガレットさんがデイジアだって気付いていたの?」


 ホテルから帰るときアメットがクリスティアに聞いていたのだがアリアドネは荷物の整理をしていたのでなんとなく耳に入ってはきたものの一緒に聞くことは出来なかった。

 クリスティアの回答を聞いたアメットは顔を赤くしていたので気になっていたのだ。


「どのタイミングにおいても確信はございませんでしたわ。ただお二人は双子だというのにマーガレットはアメットのおしめを変えていたというお話しをなさっていたでしょう?年の離れた姉が弟のおしめを変えるのならば分かりますが……成長に差異のない双子の姉が弟のおしめを変えるだなんておかしなことだと思ったのです。そしてアーデンご夫妻の部屋でデイジアの写真を見たとき、わたくしはメアリーの店にあったマーガレットの人形のことを思い出しました。彼女の姿を模した人形には赤いリボンが巻いてありました、それは写真に写るデイジアのリボンと同じだったのです。地下の部屋でレータが同じリボンを見付けたときにそれは確信へと変わりました……なのでわたくしはジョーズ卿にメアリーへと伝言を頼んだのです。あなたの愛は生きていますから怖がらずにその秘密を返すべき時が来たのだと……思い当たることがあるのならば必ず城へと来るはずですわ」


 メアリーの、いやアメリアの愛であるエットは生きており、マーガレットと名付けた秘密の子をデイジアとして返す……その意味を正確に読み取った彼女は城へと急ぎ、真実を持って全てを守ったのだ。


「それにアメットのマーガレットへの態度は姉を慕うというより愛しい恋人への接し方でしたわ。彼にとって彼女はずっとデイジアだったのでしょう」


 クリスティアがアメットに囁いたのは至極単純な言葉。


 あなたの全てからデイジアへの愛が溢れていて隠しきれていなかったから分かったのですよっと。


 そんなクリスティアの悪戯なからかいにアメットは顔を赤くしていたのだ。

 マーガレットがきっとデイジアとして戻らなかったのもアメットがいることが大きかったのだろう。


(貴族として戻れば平民との恋は難しくなるもんなぁ……)


 ラビュリントス王国では自由恋愛の窓口が少しばかり広くはなっているといっても完全では無い。

 貴族は貴族、平民は平民同士での婚姻が当たり前でそれがこの世界の、乙女ゲームの常識だ……だからこそ平民であるヒロインとのロマンスが物語ゲームになるのだ。

 そう思ったところでアリアドネの中にふっとした疑問が湧く。


(あれ?でも……)


 アメリアの愛がエットならばアメットは一体誰の子になるのだろう?


 二人の年齢は双子と偽れるくらいには離れていないはずだ。

 もし、もしもデイジアを連れて逃げるときにアメリアのお腹にエットの子供が居たのだとしたら……。

 だとしたらアメットは……。


 自分の思い至った考えに興奮し、アリアドネがクリスティアを勢いよく見れば……そんな考えなど初めから思い至っていたというように沈黙を持って笑んでいるので……アリアドネは口に出すことを止める。


 なんであれ前途は多難だろうが双子以上の結びつきのあるあの二人ならばどんな障害ですら乗り越えていくだろう。

 そしていつの日か、そう遠くない未来にメイドとの許されない恋で産まれた王子と、幼い頃に公国から行方不明となっていた少女との恋物語は運命という名のおとぎ話として公国の乙女達の胸をときめかせるのだ。

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