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公爵令嬢はミステリーがお好き  作者: 古城家康
双子祭りの生け贄
251/627

そして真実へと①

「デイジアは!デイジアは一体どうなったのですか!」

「……分からないのです」

「貴様!この期に及んで!」

「本当です!当時私を世話してくれていたメイドに子供を逃がすようにと預け、それから行方が分からないのです!私もこの一年、賢明に探したのです!ですが時間が経ちすぎていて……!」


 二十年だ。


 探すには経ちすぎた時間に何処をどう探せばいいのか分からないなりにもエットは賢明にデイジアが生きていることを願い行方を探した。

 だが、手がかり一つ見付けることが出来なかったのだと涙を流す。


「あなたに全てを任せたときからこうなる運命だと決まっていたのかもしれない。いい加減、この罪から逃れるのを終わらせるべきなのだと……」


 全ての罪の告白を終え、胸に手を当てたエットは……呟く。

 そして深く深く頭を下げる。


「どうか皆様!あの子を探すためにももうこの罪を隠すべきではないのです!えぇ、そうです!そうすべきなのです!そしてこの罪は全て私にあるとそう、そう公表するつもりです!この一年、もしこの復讐が成ったときのため全ての準備を整えてきました!ヘレナ夫人、安心してください!あなたはアーチを殺していない!辛うじて生きていたアーチの口を塞ぎ私がとどめを刺したのです!私はただ自分の罪が暴かれることを恐れたのです!だからどうかその心に罪悪感など持たないでください!この罪は全て私が背負うべきなのです!」


 床に額を付けてエットはそう懇願する。


 全て、全てこのストロング家が隠した事実から始まった事件なのだ。

 だったらヘレナの罪すらも全てストロング家が、エットが背負うべきものなのだ。


「そんな!そんなことは!」


 彼も、彼もまた家族を失ったのだ……。


 たとえそれがどんな相手でどんな理由であったとしても、その罪は許されるべきではない。

 ヘレナは自分の罪は自分が一番良く分かっているのだとエットの懇願に頭を左右に振る。


「……エット様、どうかお顔を上げられてください。結末をお決めになるのは……まだ少しお早いですわ」


 もう全ての告白は終わったというのにこの先になにがあるというのか……。

 クリスティアの言葉の意味が分からず顔を上げ困惑するエットが見つめたその緋色の瞳は彼を見ておらず、閉じられた扉を一心に見つめている。

 そして、その視線が促したかのようにタイミング良くコンコンとノックの音が部屋中に響く。

 それに皆が一斉に反応し、誰が来たのかと緊張感を漂わせる中……クリスティアだけが冷静に声を上げる。


「どうぞ、お入りになられて」


 静かに開いた扉には先程居なかったジョーズが立っている。

 そしてその後ろには、メアリー・アームが……雑貨店の店主がアメットとマーガレットを連れて立っていた。


 まず声を上げたのはエットだった。


「君は……アメリア!?アメリアなのか!?」

「あぁ!あぁ!エット!エットなのね!生きていたなんて私知らなくて!あなたはあの人に殺されたんだって!私そう思って!」


 跪いたままのエットに駆け寄り抱き締めてその身に怪我がないことを確認し、ボロボロと涙を流すメアリー。

 そしてすぐにヘレナ達へと顔を向けると、エットの横で頭を下げる。


「申し訳ございません!申し訳ございません!どうぞ彼を責めないでください!全て、全て私が悪いのでございます!」

「メアリー、あなたの真実をどうぞお話し下さい。あなたが守り隠した真実を、皆に返す時がきたのです」

「……マーガレット」


 悲鳴のような声を上げるメアリーを茫然と見つめるエットを庇うように立ったメアリーへとクリスティアが願えば、頷いたメアリーはマーガレットの名を呼び、扉の前に立つ彼女を呼び寄せる。


 足を踏み出せずに戸惑うマーガレットに大丈夫だというように笑んだアメットが優しくその背を押す。

 その優しい掌に意を決したマーガレットはメアリーへと近寄る。

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