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公爵令嬢はミステリーがお好き  作者: 古城家康
双子祭りの生け贄
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デイジア・アーデンの悲劇①

「アーデン家は建国当時からこの国を支えた騎士の家系であり、ルドルの祖母はストロング家の末の妹であったので祭りの時期には毎年この城に招待されておりました。今でこそ赤の間しか使用しない寂しい集まりですけれど昔は国内の貴族をお呼びして華やかなパーティーを開いていました……20年前のあの日もそう。私達は招待を受け、ぐずるデイジアを連れて城へと向かいました。アントは……自分がデイジアを無理に送りだしたのだと言っておりますが違います。私達もデイジアを一人で邸に残すわけにはいかなかったので先に街の祭りを見に行こうと言って連れ出したのです……今考えれば愚か以外のなにものでもない行いでした」


 アントの抱え続けている後悔を慰めるようにヘレナは俯くその姿を見る。

 きっかけは自分達にもあるのだと、あなたの罪では決してないのだと言うように。

 それにアントが納得しなくても、何度でも何度でも……。


「デイジアは城へ来た頃には機嫌も治っていて私の隣でパーティーに来た他の子達と楽しそうに話していました。ですがつまらなくなったのでしょう。他の子達と遊びたいと言い出したので私はあまり遠くへ行かないようにとその手を離し遊びに行かせました……あの子は最初近くに設けられていた子供達の集まるスペースで遊んでいたのです。なので私も安心していたのですが……目を離した隙にあの子は居なくなってしまったのです。最初は何処か別の場所で遊んでいるのだろうと思っていました、一緒に居た子達も居なかったからです。ですがその子達が戻ってもデイジアは戻らず不安にかられました、悪戯で隠れているに違いないとその不安を紛らわせながら遊んでいた子達にデイジアの行方を聞けば赤のサロンで見てからは知らないと言うのです。そして一時間経っても二時間経ってもデイジアは戻って来ず……私の胸には焦りだけが募りました」


 ヘレナの、子が居なくなったという訴えはすぐにアチェットの耳に入りすぐにパーティーはお開きとなった。

 警邏隊に連絡し、城に居る使用人達も参加して総出でデイジアの姿を探し始めたのだが見付からず……ヘレナの焦りは時を追うごとに深くなり、真夜中になった頃には体調も悪くなっていた。

 身重ということもあったのでヘレナは宿泊していた部屋へと戻り、ルドルは捜索し続けたが……娘が戻ったという吉報はどれだけ祈っても訪れることはなかった。


「朝になっても見付からないデイジアに絶望に打ちひしがれ悲しみに暮れました。ストロング公は捜索に参加され見付かるまでは城に滞在してもいいからとまるで私達の悲しみを理解して慰めるように……いえ、いいえ!そんな慈しみ気持ちではなかったのでしょう!悲しみに暮れる私達のことをその腹の中で嘲笑っておいでだったのでしょう!!」


 そして一日経ち二日経ち……。


 デイジアがひょっこり現れるのではないかという希望を捨てきれず城から帰るに帰れずにいたアーデン夫妻のところにあの生け贄が捧げられていたという谷の近くでデイジアのリボンが見付かったとの一報が入ったのだ。


 その時の絶望的な気持ちを思いだしブルブルと震えアチェットを責めるヘレナ。

 そんなヘレナの感情的な気持ちを落ち着かせるように肩を抱き隣で静かに妻の激情を聞いていたルドルは苦悶に眉を歪めて口を開く。

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