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公爵令嬢はミステリーがお好き  作者: 古城家康
双子祭りの生け贄
230/626

赤のサロン(現アーデン夫妻の客室)②

「わっ!?」

「ジョ、ジョーズ卿!?」


 ジョーズの焦った声とアリアドネの驚いた声。


 見れば暖炉の横、燭台があった場所の壁が凹み人一人が入れるほどの扉が空いている。

 どうやら燭台を下に引いたら出てくる隠し扉らしく。

 なんの気なしに燭台を掴んだジョーズが引っ張られるようにしてその扉へと吸い込まれて消えていく。


「しゅ、燭台を引いたら出て来ました」

「隠し扉ですわね。城から有事の際に脱出するための通路があるのでしょう。レータはご存じだったかしら?」

「い、いいえ。存じ上げません……隠し通路なんてそんな……」


 ラビュリントス王国で一番強いとされている聖騎士として、不測の事態に思わず声を上げしまった不甲斐なさからジョーズは気まずそうに恥ずかしそうに扉から出てくる。

 その憐れな騎士の羞恥心を見ないことにしてクリスティアは辺りを見回すと、ガラスのサイドボード上に置かれたアンティークのカンテラを持ち上げて火を灯す。


「お待ち下さいクリスティー様、まさか中にお入りになるおつもりではないですよね?」

「まぁジョーズ卿、このように強く興味をそそられる場所に入らないという選択肢がおありになるのかしら?」


 押さえられない好奇心でクリスティアの緋色の瞳がキラキラと輝きに輝いている。


 光りの一切届かない真っ暗闇で、今にもその扉の先からお化けでも出てきそうな雰囲気だというのに……普通のご令嬢ならば怖がって逃げだす所をわくわくと心躍らせて飛び込もうとしているクリスティアに、どんな危険があるのかも分からないというのにその探索は了承出来ないとジョーズは首を横に振る。


「承諾出来ません、怪我でもなされたら私が殿下に叱られます。それにそんなカンテラ一つでは暗すぎます」

「ですがジョーズ卿、わたくし燭台に引っ張られたとしてもあれほど驚いた声は上げない自信がございますから暗闇の中でも大丈夫ですわ。殿下にはわたくしからジョーズ卿を叱らないでとお伝えしておきますし。それにこの先に公を殺した殺人犯人に繋がるなんらかのヒントがあるかもしれませんわ。さぁ、参りましょう」

「私が声を上げたことと探索をすることとの関係は一切ございません!」


 行動を止められた腹いせか、見て見ぬ振りをされていた痴態を蒸し返され不甲斐なさから顔を赤らめるジョーズ。


 勇ましい勇者のように、暗闇へと向かうことを強く決めているクリスティアになにを言たところで引き留めることは出来ないのだと理解し。

 この愚行を止めることが出来るのはユーリだけだと今は居ない主君を渇望しながら(とはいえユーリでもきっと止められない)頭を抱えたジョーズはせめて先陣は自分に切らしてくれとクリスティアの持つカンテラを聖女から聖剣を授かる勇者のように引き取るのだった。

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