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公爵令嬢はミステリーがお好き  作者: 古城家康
双子祭りの生け贄
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1階、赤の遊戯室②

「さぁ、わたくしはもうよろしいのですけれどアリアドネさんはまだ見られますか?」

「う、うん……もうないけど」


 そう、この部屋にも証拠という証拠は結局無かった。


 無かったけれどもヒントは見付けた。


 それがどう事件に繋がるかは分からないけれども事件の要因であることは確かなのでなにも無いよりかは一歩、奴隷契約書の破棄に前進したので満足するアリアドネはそれよりもろくに見回りもせずいるクリスティアのまるでこの事件に興味がないかのような態度を訝しむ。


「次は赤のサロンですわね」

「それは……やはり承服しかねます」

「まぁ急にどうしたのレータ?客室は止めなかったというのに……警邏隊の方が来られたらどうせ部屋を物色するのです。今わたくし達が少し見るのとそう違いはないでしょう?」

「それは……そうですが。バード夫人の際もお止めするべきだったと後悔しております。城に滞在中の各部屋はお客様の私室となりますし……それにアーデンご夫妻の場合はサロンを客室にするほどの思い入れがお強くあられますので……せめて許可を得てからではいけませんでしょうか?」

「わたくしアーデン卿には好かれてはいないようですし……素直に承諾してくださるとは思えません。謝罪は後程わたくしがいたします。あなたに咎が向かないように尽力いたしますわ」


 あれだけ人を煽るような態度をとっていれば当たり前だが好かれることはないだろう。

 アーデン夫妻の場合は特に、その攻撃を夫人へと向けたことがルドルの感情を逆撫でしたことは明々白々。

 赤の間のメイド頭の矜持として首を縦に振るべきではないと判断したレータに、諦めたようにクリスティアは溜息を吐く。


「あなたが付いて来たくないというのであれば先にお戻りになられて結構ですわ。ただし、わたくし達がしていることを誰にも話さないと約束されてお戻りになられてください……殺人犯人の証拠を探していることをあの場に居るかもしれない殺人犯人に知られて良いことはありませんから」

「………………」


 あの青の貴賓室に閉じ込められた客人達を変わらず疑っているクリスティアは内緒だというように唇に人差し指を当てて笑みを浮かべる。

 その引き上げられて薄く開いた唇の中には純粋なる好奇心と冒険心と共に子供特有の、無邪気に蟻を潰すような邪悪さが秘められ隠されている。


 この城の中に居る全員を騙すよりもこの少女一人を騙すことはなによりも恐ろしい結末への布石となるだろう。


 現にレータを見つめていた視線をわざとらしく外したクリスティアの緋色の瞳はジョーズへと向けられる。

 その視線を受けて自身の帯刀をわざとらしく音を立てて触れたジョーズの鋭く見下ろす視線。

 それはこの場から彼女を逃がすつもりはないと暗に告げていて……拒否という態度と言葉をレータは息ごと喉の奥へと飲み込み消す。


「い、いいえ……畏まりました。出過ぎた真似を申しましたことを謝罪いたしますお嬢様。共に参ります」


 クリスティアの柔らかい物腰は使用人という自身の立場を酷く曖昧にさせる。


 立場を弁えずに意見した使用人達の愚かな末路を散々見てきたではないかと深く頭を下げたレータに満足したクリスティアと、傷つけるつもりはなかったもののクリスティアの邪魔をするのならば気絶くらいはさせなければ後からなにを言われるか分からないと思っていたジョーズは一安心し、剣の柄からその手を離した。

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