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公爵令嬢はミステリーがお好き  作者: 古城家康
双子祭りの生け贄
224/626

2階、赤の客室①

「犯人を探す……ですか?」

「えぇ、ジョーズ卿」


 化粧室から廊下へと出て、入り口で待機していたジョーズとレータへと自分達がこの殺人事件を解決するとアリアドネの肩を掴んで宣言してきたクリスティア。


 レータが居る手前、主の死で勝負をしようと思いますとは言えないので自由に動ける自分達が警邏隊が来るまでに犯人を見付け出して捕まえようと思うと無邪気で好奇心旺盛な少女らしく慎みなく振る舞う(クリスティアは意図的に)二人にジョーズ卿は諦めの表情を浮かべる。


 殺人事件があり殺人犯人が捕まっていない今、主君であるユーリの居る部屋の扉を不審者が入らないように待機していたジョーズはアリアドネと共にクリスティアが廊下へと出て来たことに嫌な予感がしていた。

 聞けば化粧室へと向かうとのことなので、部屋から出さないわけにもいかず……ジョーズが中を一瞬覗けばユーリが共に行けという目配せしてきたので付き添いを申し出たのだが、やはり嫌な予感は的中するらしい。


(殺人事件が起きたというのにあのクリスティア・ランポールが大人しくしているはずがないとは思っていたが、やはりこうなってしまったか……)


 雪崩で塞がった道が通り公国の警邏隊が来るまではせめて大人しくしていて欲しかったのだが……それは土台無理な話だったと、クリスティアの犯人捜しの意思は固く拒否は受け入れないだろうことを悟りジョーズは観念する。

 きっとクリスティアが戻って来ないことで事情を察するだろう主君の心労が自分が居ないことで少しでも軽くなればと良いのだが……ジョーズは今この時よりクリスティアが危険な目に遭わないようにしないように注意深く見守らなければならない。


「ですがそのようなこと……皆様にはどう説明をなさるのですか?」

「他の皆様にはわたくしが後程お伝えいたしますわレータ。わたくしがまずあなたにお伝えしたのはあなたは花火の間中わたくし達と共に居たという確固たるアリバイがあるからです。まさかあなただって殺人犯人が居るかもしれない部屋へと戻りたいとは思わないでしょう?わたくし達と共に行動するほうが安全ですもの。それにわたくし達で殺人犯人を見付けられたら公だって浮かばれますし、警邏隊が来るまで怯え待つ必要もなくなりますわ」

「そうかもしれませんが……」


 確かに断る理由はない。


 花火の時にはクリスティアもアリアドネも共に居たので殺人犯人ではあり得ないし、閉じ込められた室内に居て誰かを疑いながら神経をすり減らすよりかは気分も塞がないだろう。

 それにこちらにはユーリ専属の護衛騎士も居るのだ、アチェットの死が第三者の犯行だとしても返り討ちに出来るくらいの力量の持ち主なのだから安心だろう。

 口籠もりながらも納得するしかないレータは渋々といった様子で頷く。


「畏まりました。ではまず、なにをされるおつもりですか?」

「そうね、まずは皆が最後に居た部屋を一つ一つ調べてみましょう。まずは二階から」

「でしたらバード夫人とミシェルがおりました赤の客室でございます」

「ではまずはそちらに」


 レータの案内の元、一階の化粧室横にある二階へと続く階段を上る。


 この階段を上ればわざわざ中央階段に戻らなくても赤の間のみの行き来が出来るらしく、普段客人達はこちらを利用するらしい。

 二階へと上れば辿り着いたのは丁度、右側に客間やサロン、左側に客室とアチェットの遺体のある執務室などが並ぶ廊下だ。

 左へと進んだレータに続き、扉を一つ、二つと通り過ぎながら暗闇へと続く静まり返った不気味な廊下を皆、黙って進む。


 この廊下の先にあの凄惨たるアチェットの遺体があるのだ。


 嫌でも瞼の裏を離れない光景に、あの体を貫いていた剣から滴り落ちていた血の水音が奥からどんどんと近寄りながら響き渡っている気がして……廊下の薄暗さも相俟って恐怖を煽る妄想を思い浮かべながらアリアドネはブルリと身を震わせる。

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