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公爵令嬢はミステリーがお好き  作者: 古城家康
乙女ゲームと遺言書の謎
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そして彼女は後悔する④

「これで一人、攻略対象者が消えたわね」

「まぁ、どういうことですのアリアドネさん?」

「ロバート・アスノット様はアリアドネの糸で攻略者の一人なの」

「まぁ」

「フラン・ローウェン様に片思いしてたけど全然報われないって設定で、私……ってかヒロインはたまたまその気持ちに気づいて相談に乗る内に仲良くなっていって最終的にフラン様からヒロインに心変わりするって展開なの。フラン様から預かってた思い出のハンカチを返して新しいハンカチをヒロインから貰うときのイベントが泣けるんだよねぇ……フラン様はライバル令嬢だけど一方的な片思いだったから、ロバート様が心変わりした頃に別の人物と婚約するって展開なの」

「そうでしたのね、わたくし余計なことをいたしましたかしら?」

「いいんじゃない?私は自分が殺されないためにはシナリオには無い展開があるほうがいいわけだし。ロバート様ルートはヒロインと結ばれないとフラン様とすら結ばれない一人エンドで可哀想なエンディングだし。それに私の最推しは殿下だったからクリスティーが協力してくれるならシナリオ外でのハッピーエンディングは安泰なわけだし!というかロバート様はアリアドネの糸でぶっちぎりで不人気だった!」


 ヒロインとフランの間をいったりきたりと騎士のくせに優柔不断で……ハッキリしない態度に何人のアリアドネの糸ファンが苛々したことか。

 とはいえ攻略対象の中で一番単純で一番落としやすく初心者攻略者として人気だったのはロバートで、クリスティアの操る悪の組織との戦闘シーンは最も多くドラマチックだった。


「ところでさ、私がマーシェ邸に潜入する必要ってあったの?」


 幸せになれよロバートっと心の中でエールを送りながら無駄にメイドの仕事させられただけな気がするアリアドネが不満を漏らす。

 最初の遺言書探しも遠目から見るだけで参加は出来なかったし、新しい遺言書の発見時には参加すら出来ず全て事後報告だった。

 給金を貰えたから良かったけれどこんな働き方は労働契約外だと唇を尖らせる。


「勿論ですわ。ルーシーには主に伯爵について調べてもらっておりましたから、あなたが邸のことを色々と使用人達に聞いて下さったお陰で事件は解決いたしましたのよ。幽霊話は実に素晴らしい情報でしたわ。感謝しております」

「そうなの?あなたの侍女のほうがよっぽど役に立った気がするんだけど」


 ルーシーの体は一つなのだからクリスティアがマーシェ邸へ行くまでに出来ることは限られていただろう。

 それに些細な噂話程度のことはルーシーのように完璧に仕事をこなす者の前では皆、気後れして口を噤みがちだが。

 アリアドネのように愛想が良く少し抜けているくらいだと可愛がりやすくなんでも話したくなるというものなので、そこのところはアリアドネは非常に役に立ったといえる。


「それにルーシーにもしもなんらかの疑いが掛かるようなことになればあなたを身代わりに出来るでしょう?」

「ちょっと!それ私が捕まったらどうすんのよ!」


 ルーシーは何者にも代えがたい大切な侍女なのだからとニッコリ微笑むクリスティアの8割くらいの真意を知り、マーシェ邸へとアリアドネと共に行くことになったときはどうして一緒に連れて行かなければならないのかと不満でしかなかったが自分のための身代わりだったなんてと感動し瞳を潤ませるルーシーと、それを聞き危うく前科者にされるところだったアリアドネは瞼を見開き瞳をからっからに乾かす。


 とはいえクリスティアのルーシーは完璧でなければならないので捕まるような失態を犯すはずはないので心配はしてはおらず。

 ルーシーと関係なくアリアドネが捕まったとしても昨日今日の付き合いなので然程クリスティアの心は痛まなかっただろう。


 きっと面会室で囚人服を着るアリアドネにこんなことになるとは思わなかったのごめんなさいっと優秀な弁護士を紹介しながら前科のつくであろうアリアドネに悪びれなくクリスティアは謝り微笑むのだ。

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