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公爵令嬢はミステリーがお好き  作者: 古城家康
乙女ゲームと遺言書の謎
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そして彼女は後悔する①

「あんな結末になるとはね……クリスティーは分かってたの?」


 遺言書探しから数日経った学園の図書室。

 いつもの場所でいつものように暖かい日差しを受けながら紅茶飲んでいたクリスティアの後ろにはいつもの通りルーシーが待機しており、クリスティアの前にはフラン、そしてその横にはアリアドネが座っている。


「伯爵の亡くなられた原因を知っていたのかと問われますとそれはわたくしにも分かりませんでしたわ。ただ、伯爵は薬をご自身で管理しておりましたので足りなくなるということはないとは思っておりました。なのでそれを飲み干して自死したという筋書きに納得はいったのですが……そうなると一つの疑問が湧いてはいたのです。あの二つの遺言書は確実に伯爵からヴィオラ様に宛てた宝探しでした。亡くなられた後もヴィオラ様を楽しませようとした伯爵からの贈り物であり、学問の徒となったヴィオラ様への挑戦でもあったのです。でしたらそこにはまず始まりがなければなりません。遺言書が他にもあるという、例えば宝の地図のような物がなければ宝探しは始まりすらしないのです。けれども伯爵はその地図をまだ準備しておられませんでした。ヴィオラ様も伯爵のご友人だという人の手紙がなければその心に暗雲はあったとしても今回の遺言書探しをなさろうとは思わなかったでしょうからわたくしはそれが無いことに引っかかってはいたのです。ヴィオラ様の興味を引くためには伯爵ご自身がその意思を持って地図をご用意なさらなければならなかったでしょう。自死ならば尚のこと。地図を準備をせずに死ぬということは普通あり得ないことです」


 宝の地図がなければ宝探しは始まらない。


 今回は偶然、他人からもたらされた地図をヴィオラが気にしたから良かったもののもしそれがなければ、ヴィオラが興味を示さなければ……。


 リアドの遺言書、そしてその死は永遠に暗闇の中だっただろう。


「そうして一つ一つの疑問を取り除いた結果見付けたのがあの世にも変わった遺言書だったのですね。私、リアド伯爵が魔法道具で遺言書を残しているなんて思いもよりませんでしたわ」

「えぇ、わたくしもですわフランさん。昔の映像機にシャンデリアがあったということをエヴァン先生からお聞きしなければ思いもしなかったことでしょう……もしあの女神像の遺言書を見付けたと安心してそのままそれを施行していたら、そらみたことかと伯爵に高笑いされていたことでしょう。そう考えますとわたくしが全ての謎を解き明かせたのは伯爵が宝の地図を残されていなかったからかもしれませんわね。きっと素晴らしい宝の地図をご準備されたでしょうからわたくしですら手こずっていたかもしれません。伯爵が準備した地図で是非とも謎を解きたかったですわ」

「天下のクリスティーもリアド伯爵の謎にはまんまと騙されるところだったわけね」

「えぇ、認めますわ。あなたが教えてくれた噴水の幽霊話は事実だったというのに書斎に出た幽霊話を軽んじてしまった自分を恥じ入るばかりです。伯爵のドッペルゲンガーは映像機の映像をたまたま使用人が見たのでしょう。今度わたくしが自分の推理を過信しそうになったときはどうぞシャンデリアの映像とおっしゃってくださいな。わたくしの敬愛なる探偵も自惚れを押さえるチョコレートの箱をお持ちだったのですもの」


 雨の日に噴水を覗くと白い女の幽霊(女神の像)が見えていたのは屈折率の関係で見えていたのだと高を括ってしまいそれ以外ないと僅かな疑問には蓋をして囚われてしまったこと。

 解決は出来たけれどもそれはエヴァンの意図せぬ助言があったからこその勝利だったことに違いは無く、それがなければきっとクリスティアは女神像の遺言書で納得していたであろうことに少しばかり拗ねたように唇を尖らせる。

 そんなクリスティアの珍しく子供っぽい表情にアリアドネもフランも笑みを溢す。

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