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公爵令嬢はミステリーがお好き  作者: 古城家康
乙女ゲームと遺言書の謎
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新たな遺言書③

「小窓からはなにが見えますか?」

「小窓?あぁ、なにって……普通に水の枯れた噴水のある庭が見えるだけだが」


 立てと言われたので仕方なく立ったもののこの小さな椅子に立たなくてもロバートの身長ならばこの小窓は顔の位置にきそうなのだが……。

 だが今更降りるわけにもいかないので屈むようにして覗いた小窓からは特別自分が泊まった部屋のバルコニーから見ていた庭とはなんら変わらない景色が広がっている。


「ではあちらのバルコニーから外に出られて庭を見たときになにが見えなくなりますか?」

「はぁ?」


 思いもよらないクリスティアの言葉になにを言っているのか訳が分からないという風に眉を顰めるロバート。


 見えなくなるものなんてあるわけがないだろう。


 だがそんな文句を口に出しても仕方がない、やれと言われたらやるしかないので渋々椅子から降りて小窓の左奥の方にある窓からバルコニーに出て庭を望んだロバートは視線を右に向けた瞬間、驚いたように瞼を見開きバルコニーから室内へと慌てて戻ると再び小窓を近寄り椅子に立つ暇もないという勢いで小窓を覗く。


「石像だ!」

「えっ?」

「この小窓から見ると庭の噴水の上に女神の石像が見える!」


 ロバートは興奮したような声を上げて一同を振り返り見る。

 だが庭のことをよく知っているエリンやアルフレド、ヴィオラはその興奮と言っていることの意味が理解出来ず唖然とする。


 庭の噴水に女神の石像なんて物はない。


 この邸で幼い頃から育ってきたマーシェ家の者ならば誰でも知っていることだ。

 だがロバートの発見にクリスティアだけは満足げにニッコリと微笑む。


「ヴィオラ様もどうぞ、そちらの椅子に立ち小窓を覗いてみてください」

「え、えぇ……」


 クリスティアに言われ戸惑いの表情を浮かべていたヴィオラはその小さな椅子に立ち上がり小窓を覗く。

 屈んだり背伸びをしたりせずとも丁度顔が小窓の位置になったヴィオラが小窓を覗けばそこには見慣れた庭と噴水が見える。


 幼い頃から見てきた庭の古い噴水だ、その上に女神の像なんて見たことはなかったのだが……今、その視線の中にはハッキリと腰に帯刀をした女神の像が両手を天へと掲げこちらを向いて立っている。


 リアドが崇拝していた戦いの女神の像だ。


 まさかそんなっと小さな声を上げたヴィオラは驚き小窓から顔を離す。


「本当に女神の像がございます!」

「馬鹿なことを!そんなもの!噴水の上にはなかったはずだ!」

「いいえ叔父様!確かに、確かにございますわ!」


 信じられないけれども確かに見えるのだと声を上げたヴィオラはアルフレドの否定の言葉に頭を左右に振る。

 この目で確かめなければ信じられないというようにヴィオラを押しのけたアルフレドも椅子に立ち屈んで小窓を覗けば、確かにこそのは女神の像が微笑を浮かべて立ち尽くしている。


「そんな、一体どういう……!」

「皆様がないと思われるのも仕方がございませんわ。あちらの石像はある程度の高さのある場所と角度から見ないと姿が見えないようになっているのですから」

「どういうことだ?」

「殿下、伯爵は先の戦争で使った魔法道具をコレクションされておいでだとわたくしお聞きいたしました。確か戦争時に狙撃兵は高所で待機し敵兵を狙って撃っていたと記憶しております。その際には下からは姿を見えなくする魔法道具を使用していたと記憶しているのですけれどお間違いはなかったでしょうかロバート様?」

「あぁ、遠距離での武器は後方支援が基本だからな。高所で待機し、敵に見付からないように光りを屈折させて姿を消す魔法道具を所持し使用していた……確かにそれを使用すれば動かない石像の一つ簡単に消すことができるだろう」

「あれはその類の物を像に所持させているのでしょう。では皆様、噴水前までご移動をお願いいたします」


 ルーシーを先頭に一階へと降りてサロンから庭へと出た一同は生け垣の先にある噴水の前に集まる。


 白い大理石で出来た円形の噴水は中央に長く伸びた噴水口があり、その噴水口の上部にはなにかが置けるように少し平たくなっている。


 やはり下から見上げた噴水には小窓から見たような女神の像は見えない。

 だがロバートもヴィオラもアルフレドさえも確かに、そこに女神の像を見たのだ。


「全く分からないものなのですね」

「えぇ、フランさん。横や下からは全く分からないと思います」


 この邸で育った者達ですら気付かなかったのだからフランが気付かなくて当然だろう。


 ロバートが枯れた噴水の中へと入り中央の、女神の像が見えていた場所を手で触れてみる。


「やはりここになにかある……が、固定されていて動かないようだ」

「ロバート様、女神の像が腰に差していた剣を外してみてください。恐らくそれが姿を消す魔法道具になると思います」

「これか?」


 クリスティアに言われロバートは自分が見た女神の像が腰に差していた剣のあったであろう空中を掴んでなにかを抜き出すような動作をする。

 すると不自然に空を掴んでいたその手を引いていけばの手の中に剣の柄が現れそして……太陽の下へと白く美しい女神の像がゆっくりとまるで天から降臨するかのように現れる。

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