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公爵令嬢はミステリーがお好き  作者: 古城家康
リネット・ロレンス殺人事件
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王太子殿下の苦悩④

「血塗れのロレンス卿を見た時点で対人警察をすぐに呼ぶべきだろう」


 反省のハの字も見えないクリスティアに苛立ち今回ばかりは許してなるものかと、尤もであり騒ぎの起こらなかったであろう解決法をユーリは示す。


 こんなことになるのならばクリスティアを邸まで迎えに行き共に夜会へと向かえば良かった。

 クリスティアが少し所用があるので先に行っておいてくれと伝言を寄越したものだから、のこのこと先に来てしまったが失策だった。

 ランポール家やユーリのことを思ってくれるのならばどうして血塗れのロレンス卿にエスコートされて夜会へ行くという選択を選ぶのか警察を呼ぶべきだったと咎める。


 この国には警察組織が二つある。

 一つはユーリが今回の対処を任せるべきだったと言っている対人警察で、魔法以外で起きた事件を調べ捜査する警察組織。

 もう一つは対魔警察で、魔法によって起きた事件を調べ捜査する警察組織だ。

 この二組織は事あるごとに対立する最悪の仲なのだがそれは今は関係ないので置いておくとして、問題はクリスティアがそれを呼ばずに一人で対処したことだ。


「卿は正気を失っており自分がなにをしたのか覚えておられなかったのです。忘れたままの事柄について自首をしろと進めたところで理解はされないどころか、起こした事実と忘れた現実の整合性が取れず暴れる可能性もありましたので……騎士や警察にお伝えしたところで取り押さえるのは一苦労かと思いましたの。なのでまずは人の多いところに連れて行き不意を突くのが一番良い方法かと思いましたの」

「頭が痛い!」


 暴れる可能性も考えての対処だがなにが悪かったのか分からないというクリスティアの態度に額を押さえて堪らず叫んだユーリ。

 十分自分が危険な状態であったと理解してのこの対処はなお質が悪い。

 今更過ぎ去った危険にユーリがあれやこれや言ったところでクリスティアには響かないのだろうし倍の言い訳が返ってくるだけだ。

 女はどうしてこう弁が立つのか……深く息を吸い込んだユーリはゆっくりと苛立ちを吐き出す。


「……どうして遺体がベッドの下にあると分かったんだ」

「道中、ロレンス卿と簡単なお喋りをしておりましたの。なにかあったことは卿のお姿を見れば分かりましたから……わたくし幸いにも卿のお邸の間取りを覚えておりましたのでそこを探し物をするように案内しておりますと卿は意図的に寝室という言葉を避けておりました、ですのでそこでなにかが起きたということが分かりました。では寝室の何処で起きたことなのかということが気になりましたので寝室にある家具にある物を隠したとしてそれを何処に隠したのか謎解きとしてお答え頂きますと今度はベッドという場所を避けておりました。寝室でベッドは一番に思い浮かぶ家具だというのに卿は全くそれに触れませんの、ですからそこでなにかがあったことが分かりました。お姿から察するに誰かを殺したことはあの血の量からして察しましたので、では最後にその遺体は何処にあるのか……寝かせたままではないことが分かりましたので残りは上か下の二択です。いくらなんでも天蓋の上に遺体を上げるというのは一人では無理ですし現実的ではありませんので下に隠しているのだろうと推理をいたしました。卿に色々とお聞きしようと遠回りしたりしておりましたので時間がかかってしまい遅れたことをお詫びいたしますわ殿下」


 事も無げに見ても居ない現場を会話だけで推測したことに驚き目を見張るユーリ。

 しかしクリスティアはそんなに感心した目を向けないで良いというような照れた表情を浮かべて微笑む。


「わたくしの才ではございません。敬愛なる名探偵がおっしゃられた灰色の脳細胞を働かせただけですわ」

「毎回思うけど誰なんだその敬愛なる名探偵というのは!?」


 感心しているのではない、その押さえきれない好奇心と弁明に良く回る舌にユーリは呆れているのだ。

 幼い頃からクリスティアの口から何度となく出てくる忌まわしき名探偵に嫌気が差し叫んだユーリにクリスティアが至極嘆かわしげな目を向ける。

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