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公爵令嬢はミステリーがお好き  作者: 古城家康
乙女ゲームと遺言書の謎
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書斎での再会④

「そうなのですね。ですが勝手な行動をされたことはあまり褒められたことではございませんわ。わたくし達が最初にあなたを見付けたから良かったものの他の方に見付かれば最悪警察行きですのよ?」

「うん、ごめん」


 なにも見付けられず肩を落とすアリアドネは乙女ゲーム外のシナリオではなんのポテンシャルも発揮できなかったことを素直に謝り、ゲーム画面ではないリアル画面だと自分の力量なんてこんなものだと溜息を吐く。


 ヒロインだからといって万能ではないのだ。


 特に転生ヒロインなんてものは知っているシナリオをなぞってこそ、ネタバレという形でそのポテンシャルが発揮されるというもの。

 とはいえ転生悪役令嬢であるはずのクリスティアはシナリオを知らなくても謎を解けるくらい有能で万能らしいが……。


「理解してくだされば良いのです。まぁまぁそんなに肩を落とさないで、怒ってはおりませんわ。あなたを送り込んだのはわたくしなのですから心配したのです。それに今回はあなたが勇敢にも遺言書探しをしてくれたお陰でわたくし達の手間が少しは省けましたわ」

「手間省きのついでに伯爵の遺産はエリンやアルフレドじゃなくてヴィオラに譲るべきだって使用人達が嘆いてたわ。あの二人、使用人達からは相当嫌われてるみたい。アルフレドは特に、金食い虫なんだって」

「まぁ……そうなのね、大変役に立つ情報ですわ」

「それとアルフレドの母親は伯爵の後妻に入って早くに亡くなったから、エリンが嫁ぐまでは彼女が彼の母親代わりだったって料理長が言ってた。あと、エリンとアルフレドが喧嘩っていうかここ数日揉めてる姿をよく見たわ、邸を売るとか売らないとかで……姉さんの幸せをこの邸は邪魔をするとかなんとか……」

「邪魔……ですか?」

「意味はさっぱり分からないけど二人が揉めるのは珍しいってたまたま一緒に聞いてたリサが言ってた」


 なにも見付けられなかったのでしょぼんとしたまま使用人達が口を揃えて言っていたことをアリアドネは悔し紛れに口にする。

 これは朝の着替えを手伝ったルーシーから既に聞いた話なのでクリスティアにとってはさして驚きもしない事実だったのだが……アリアドネのあまりの凹みっぷりが可哀想になったので初めてそれを聞いたように驚き、褒めて気分をもり立てる。


 これから先もアリアドネにはしっかり役に立って貰わなければならないのだ、この潜入はいわば彼女の教育の一環でもある。


 クリスティアのお褒めの言葉に凹んだ気分が上昇したらしく料理長の話も披露するアリアドネはおだてると調子に乗るタイプらしい。


「この部屋の中で他に探していない場所はございませんか?」

「その机とか椅子の周りはまだ調べてないけど……」

「こちらですか?」


 それは部屋の中央に置かれた長机と五脚の肘掛け椅子だった。


 部屋に入って最初にあるそれらの家具をアリアドネが探さなかったのは至極単純な理由で、隠された遺言書というものは引き出しのある本棚や机に誰にも知られていないような秘密の空間があり、そこに隠されているに違いないというゲームや漫画の知識から得た安易な考えからだった……だがその安易な考えは呆気なく空振りに終わり、撃沈したのだが。


 書斎机前の頭上には入ったときにも目に付いたこの部屋とは似つかわしくないシャンデリアがぶら下がっており、長机をコの字に囲む一人用の肘掛け椅子が対面に四脚ずつと書斎机の前に一脚配置されている。

 対面の四脚は茶色の革張りで重厚そうな見た目だというのに書斎机前の一脚は濃い赤紫の布張りの肘掛け椅子で、書斎というよりかは客間にでもありそうなデザインだ。

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