表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
公爵令嬢はミステリーがお好き  作者: 古城家康
乙女ゲームと遺言書の謎
145/626

書斎での再会③

「それで、わたくし昨日あなたには使用人達から邸でなにか変わったことはないかのお話を他にも十分にお聞きするようにと申したはずですけれど……こんなところでなにをなさっているのかしら?」


 マーシェ邸に来て早々、部屋で休むと言って一人になったときにクリスティアは潜入していたアリアドネから邸の内情などの報告を受けていた。

 とはいえアリアドネは人生初めての潜入捜査となるので勝手が分からず、その報告の全てはルーシーからの言伝であり、今日の今日までアリアドネは真面目に使用人としての仕事をこなし、なんとなく耳に入る噂話を聞いていただけだったのだが……。


 一応報告までにその噂話をクリスティアに報告すれば手を叩き褒められ、同じように変わった噂がないか調べて欲しいと新たな任務を授けられていたのだ。


 てっきりそんな噂話程度のことしか調べられないなんて期待外れですわっと馬鹿にされるのかと思っていたアリアドネはもし文句の一つでもクリスティアに言われたら使用人としてこき使われていた鬱憤と不満が積もりに積もっていたのでその文句を倍にして返してやろうと意気込んでいたというのに……。

 予想とは違う労いの言葉に、褒められおだてられて我ながら単純だが労働に対する不満は泡のように消えていってしまいクリスティアの新たな任務を安請け合いしたのだ。


 使用人としての仕事を誰も褒めてくれなかったのでその反動もあったのだろう。


 この邸に送り込んだ張本人だというのに誰にも労われない労を労われてアリアドネにはクリスティアが一瞬、天使に見えてしまったのだ。


 その実、羽の色は真っ黒だったが……。


「クリスティーに言われた通りちゃんと他の使用人達に邸についてなにかおかしなこととかなかったか色々と話を聞いてみたわよ。でもそういったことって真面目に聞くと馬鹿らしい内容でさ。同じ部屋のリサは邸中にある剥製の中には伯爵が戦争の時に殺した敵国の兵士がミイラにされて入ってるだとか。庭師のエンは最近、雨の日に噴水を覗くと白い女の霊が出るんだとか言って怯えてたわ、あと花壇の花が植えたばっかりなのに枯れたって文句言ってた……執事頭のラングさんは伯爵は古い魔法道具を好んで使っていて自分が戦争のときに使っていた物とかは壊れても大切にコレクションしていたんだって言ってて、亡くなる前にはそういった壊れていた道具を直したりしてそれを業者の人が書斎に運んでたりしてたんだって。ラングさんも古い魔法道具の使い方を聞かれたりしたみたい……でもそういった物とかは伯爵が亡くなった後に遺品整理でエリンが売っちゃったみたいで、残ってるのは日常的に使える物ばっかりだって残念がってた。なんかそういった噂を聞いてたら私も調べたくなっちゃって。試しにこの部屋を調べに来たんだけど……なにも見付けられなかった」


 ルーシーと共にマーシェ邸へ訪れたアリアドネは学園をわざわざ休んできたのだ。

 それなのにただただ労働をさせられて聞き出せたのは重要とは思えない噂話だけだなんて……。


 もっとこうゲームのアリアドネの糸の様な恋愛パートではない探偵パートをしたい。

 ヒロインである自分のポテンシャルを持ってすれば例えシナリオにない内容だとしても謎を解くことくらい朝飯前、ちょちょいのちょいのはずだ。

 光り輝くエフェクトが掛かっているヒントとかを苦も無く幸運にも見付けられるのがヒロイン、そうヒロインとはそういうものだ!


 ということでヒロインという主人公補正が掛かっていることを信じて勘を頼りにここに違いないとクリスティア達が来る前にこっそりと忍び込んだ書斎で、光り輝くエフェクトを探して漁っていた書斎机の引き出し中には請求書や書類の紙の束とお菓子の箱、そして空の薬の瓶が何個かと机上には羽ペンにインクと特に変わった物ではなく……書斎机にならばあってもおかしくないだろう物達が綺麗に整頓されて置かれていた。


 引き出しが二重底になっていないか賢明に探してみたけれどあるのは普通の引き出しだけで……。


 残念ながらどのアイテムにもエフェクトは掛かっていなかったし、ポテンシャルだけではなにも見付からなかった現実にアリアドネは項垂れ嘆く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ