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公爵令嬢はミステリーがお好き  作者: 古城家康
乙女ゲームと遺言書の謎
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書斎での再会②

「まぁ、悪い子ですわね」


 そのメイドが窓際に飾られた空の花瓶を見るため後ろを振り向いた瞬間、そっとフランと共に室内へと入ったクリスティアは扉を閉める音をわざと立てて中にいたメイドに声を掛ける。

 その音を聞いてビクッと分かりやすいほど肩を跳ね上げた少女は慌てて振り返るとこちらを見もせずに、前屈しそうなほど頭を下げる。


「も、申し訳ございません!」

「なにをなさっていたのかしら?」

「いえ、その……探し物を……掃除中にここら辺で大切な物を落とした気がするなって、あははっ」


 手から吹き出る汗を拭うようにスカートを握り締めた少女はからっからに乾いた声で空笑う。


 下手な嘘を自分が吐いていると分かっているのだろう。

 緊張から肩が上がり震え、怯える少女は頭を下げたままこちらを一度たりとも見ようとしない。


「引き出しの中を覗いておきながら落とし物とは……そんな稚拙な言い訳は通用いたしませんわ。盗人だと思われて対人警察に突き出されてしまいますわよアリアドネさん」


 名前を呼ばれたことでそれが漸く知った声だと気付いたのか、ハッと顔を上げたアリアドネはその視線の先で戸惑うフランと共に意地悪く微笑むクリスティアの姿を見て強張っていた体の緊張を解くと安心したように非難するような声を上げる。


「ちょっと!意地悪しないでよねクリスティー!驚いたじゃない!」


 心臓に悪すぎる!


 てっきり家人に見付かったのかと思って焦りに焦ったアリアドネは時代錯誤なむち打ちでも受ける覚悟を決めるところだったとバクバク鳴る心臓を押さえる。


 乙女ゲームの攻略対象者達にむち打ちの跡があればそれはヒロインを守るためだとかいう好感度を上げるご都合主義のイベントになるだろうが、ヒロインにむち打ちの跡があればそれは成人指定(R18)のゲームとなってしまう。

 オプションで攻略対象者からの愛の鞭だとかでなければそんな傷があればただただどん引きさせるだけの要素でしかない。

 アリアドネの糸は事件が起こるという残虐性から全年齢指定ではなかったもののそういう成人指定な趣向はなかったので攻略対象者の好感度は上がるどころか下がるだけだろう。


 大体、乙女ゲームのヒロインにあって許される傷跡は吸血鬼という名の攻略対象者が与える噛み跡だけだし、アリアドネの糸に吸血鬼なんて存在しない。


 バッドエンディングに突き進むであろう傷跡なんてごめんだと怒るアリアドネにクリスティアはさして悪びれた様子はなく楽しそうにクスクスと笑い声を上げる。

 そんな二人の仲の良さをどうい関係なのか分からないフランは困った顔で見つめる。


「ごめんなさいねフランさん、彼女はアリアドネ・フォレストさんといってルーシーと共にわたくしがこちらに忍び込ませておりましたの。ラビュリントス学園で知り合ったわたくしの友人ですわ」

「そうなのですね。私フラン・ローウェンと申します、クリスティー様のご友人でしたら私のことも気軽にフランとお呼び下さい」

「えっ!?でも私、平民だし……」

「学園に身を置くものに身分など関係ありません、クリスティー様のご友人ならば尚更お気になさらないでください」

「ならその、アリアドネ・フォレストです……私もアリアドネって呼んで」

「よろしくお願いしますアリアドネさん」

「うん、フラン……さん」

「ふふっ、どうぞ皆様には彼女を忍び込ませていることを内緒にしておりますのでフランさんも黙っていてくださいね」

「勿論ですクリスティー様」


 じっとフランを見つめるアリアドネの人の心の内を探るような視線になにか嫌われるようなことをしたのかしらっと戸惑いながらも、クリスティアの友人であるならば自分にとってもそうであるのでフランは微笑みを浮かべて軽く頭を下げる。


 アリアドネがリネット・ロレンス殺人事件のときに対人警察にクリスティアが殺人犯人だと明後日な告発した本人だと知れば、フランはその頭を下げなかったし親しくなる気が全く無くなっていただろうが、その事実は知らないのでただ、穏やかに仲良くなるための挨拶をお互いに交わす。

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