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公爵令嬢はミステリーがお好き  作者: 古城家康
乙女ゲームと遺言書の謎
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マーシェ邸②

「出迎えありがとうミセス・エリン。ユーリ・クインだ。伯爵が亡くなってまだ日の経っていない時期だというのに急に伺うことになってしまってすまない。滞在を許可してくれたことに感謝する」

「いいえ父が亡くなると同時に爵位は返上されるとのことですから領地を確認するのは王国の勤めでございます。そしてそれに協力することは国民としての義務でございますわ王太子殿下、とはいえ殿下自ら視察に来られたのは驚きはしましたけれども。ご紹介いたします、こちらは弟のアルフレド・マーシェ、ジョージ様とフランお嬢様におかれましては紹介の必要はないかと思いますが姪のヴィオラ・マーシェでございます」

「よろしくお願いいたします殿下」


 アルフレドが警戒を滲ませた愛想笑いを浮かべてユーリに向かって手を差し出す。

 仮にも王太子殿下という肩書きを持つユーリに対して身体的特徴と年齢以外は下位であるアルフレドが握手を求める行為は大変無礼な行為なのだが、まぁそれで気分を害するほどユーリは子供ではないしアルフレドもユーリの度量を試すためにワザと手を差し出したのだろう。


 とはいえ不誠実な者の手は出来れば握り返したくはないのだけれども、礼儀としてその手を握ったユーリも劣らずというかそれ以上の愛想笑いを浮かべてアルフレドを迎え撃つ。


(潔癖では無いが、革の手袋をしていて正解だったな)

「殿下、ご自分だけ皆様と仲良くなさらないで」

「あぁ、すまない。彼女は私の婚約者のクリスティア・ランポール。隣の少年が弟のエル・ランポールだ。ランポール公爵はマーシェ家が管理する領地に大変興味を持っているそうだ」


 必要以上にユーリの手を強く握るアルフレドの忌ま忌ましさを隠しもしない態度は好きにはなれないタイプだ。


 ユーリの監査によっては領地を接収されるかもしれないというのに媚びへつらうことも出来ない矜持の高さに感じる愚かさをおくびにも出さず(とはいえ媚びへつらわれても嫌なのだが)、手を離したユーリにクリスティアだけはその嫌悪感を察したらしくエスコートを頼むようにその腕に手を回して、アルフレドが握っていた手を優しく握りユーリの感じる不愉快さを和らげる。


「よろしくお願いいたします。どうぞわたくしのことはクリスティーとお呼び下さい」

「僕のことはエルと。今日は公爵の名代として参りましたのでよろしくお願いします」

「あちらに居るのがロバート・アスノット、私の学友で将来有望な騎士だ。リアド氏の功績に興味があるので同行を許した。フランとジョージの説明は構わないな?」

「えぇ、お二人に関してはヴィオラからお話を常々お聞きしておりますから」

「フランお嬢様、ジョージ坊ちゃま」

「ヴィオラ、こんなときに訪問をしてしまって申し訳なかったね」

「いいえ坊ちゃま、お二人とは前もって祖父の弔問に伺うとのお手紙を頂いておりましたので。幸い王太子殿下と皆様はフランお嬢様のご学友であらせられますので問題はないとご理解をいただいております」

「フランさんが居ると知りわたくしとても退屈せずに済みますわ」


 家族を騙しているという罪悪感があるのだろう……ヴィオラはきごちない微笑みを浮かべて、花柄の刺繍が入った黒いローブモンタントドレスに黒いベールの付いた小さな帽子を被った姿のフランとその隣でエスコートをする白いシャツに黒いネクタイ、ベスト、シングルのジャケットに灰色のボーダーズボン姿のジョージへと近寄る。


 ちなみにロバートはリアドが誇り高き軍人だったということでそれを称えるために代わり映えしない騎士団の制服に身を包んでいる。


 ヴィオラはクリスティアとエルとは初対面ということで予め話を合わせておくようにと指示をされているので、ユーリの紹介に初対面であるかのようにお互いに頭を下げて、軽く挨拶をする。

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