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公爵令嬢はミステリーがお好き  作者: 古城家康
リネット・ロレンス殺人事件
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王太子殿下の苦悩①

「君は!君は普通に登場出来ないのかクリスティア!?」


 科学技術が発達せず魔法という存在で発展したラビュリントス王国。

 招待されたクレイソン侯爵邸で来て早々に騒乱を巻き起こした張本人は主人の好意により夜会用に準備したゲストルームではなく、他の客に目が触れないよう本日使用する予定の無かった来賓室の一室へと通されていた。


 褒められたセンスではない、贅沢こそ最上だと主張する室内。

 紋章がモチーフになっている特別製のカーペット。

 白いマントルピースに彫刻された左右を支える二体の女神と上部の天使は灯されていない暖炉の炎を暖かげに微笑を携えて見守り、囲っている。

 光沢の輝く最高級で座り心地の柔らかい革張りのソファー、その前には足が蔓薔薇によって支えられ中央に平面の大輪を咲かせた三脚テーブルが誂えてある。


 なんて強欲な部屋なのだろうか。


 テーブルの上に置かれた紅茶を優雅に飲みながら怒鳴られている声を右から左へ聞き流しているその少女、クリスティア・ランポールは部屋のセンスのなさを心で嘆く。

 その前では先程から部屋を左右に歩き回っている少年が苛立たしげにしている。

 後ろに撫でつけた銀色のショートの髪を揺らし青い瞳に険悪を滲ませて声を荒げているのはこの国の第一王太子でありクリスティアの婚約者であるユーリ・クイン。

 ソファーに掛けられた赤に装飾の施された豪奢な細身のコート、白いシャツの上から黄色のウエストコートを着て、グレーのブリーチズはロングブーツの中に入り、苛立たしげにコツコツと地面とぶつかるそのブーツには細工の凝った刺繍が縫われている。

 贅沢ではあれどセンスはいい、この部屋とは大違いだ。

 目が悪くなりそうな部屋から視線を逸らすようにユーリへとクリスティアは視線を向ける。


「どうぞ殿下、わたくしのことはクリスティーとお呼びください」


 声を荒げてはいるものの婚約者であるクリスティアの神経を心配しているのか、落ち着かせる効果のあるハーブティーを飲み物に選んでいる辺りにユーリの優しさが滲み出ている。

 香り立つ紅茶を口に含みながら、はてさてユーリは怒っているのか心配しているのかはたまた困っているのか……。

 その心情を計りかねて魔法で上下左右自由自在に浮遊する数個のランタンの内の一つにクリスティアは触れる。

 触れるとぼわりと一際輝いて逃げるように遠ざかっていくランタン。

 ランタンの明るさは一つ一つは薄いものの数があるので室内は昼間の明るさとそう変わらない。


 毎回、ユーリがクリスティアの名を呼ぶ度に繰り返される問答をいつもの挨拶のようにし、なにを怒っているのか分からないといった風に頭を傾けたクリスティアはあぁ、と思いついたようにドレスの胸に手を当てる。

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