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公爵令嬢はミステリーがお好き  作者: 古城家康
乙女ゲームと遺言書の謎
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中央対人警察署①

「皆様、お疲れ様です」

「クリスティー様!」


 次の日の放課後。


 いつもは刑事達の事件解決に注ぐ情熱で熱気やむさ苦しさの漂う中央対人警察署にルーシーを伴って現れたのは制服姿のクリスティア。


 慣れた様子で悠然となにやら難しい顔で作業をしている刑事達へと自分の存在を示すように挨拶をすればリネット・ロレンス殺人事件の際に仲良くなったラック・ヘイルズがその声にいち早く反応し、ご主人様を見付けた愛犬の如く飛びつきそうな勢いで椅子から立ち上がりクリスティアへと駆け寄る。


「どうしたんですかこんな所まで!」

「少しお願いしたいことがございましてお伺いしたのですけれど……お忙しかったかしら?」

「そんな!ご用があるのなら僕が直接そちらに行ったのにっいった!?」

「お前はなんのご用を喋るつもりだ」


 機密事項ですらベラベラ喋りだしそうなラックの頭を持っていた手帳で小突いたのは相棒であるニール・グラド。

 いつも以上にくたびれた制服と無精髭で、疲れ切った表情を浮かべながらその後ろへと立つ。


「まぁ、ニール。随分と疲れた顔をしておりますが……なにか困難な事件でもおありなのかしら?」

「ここを何処だと思ってんだ。事件がないわけないだ、うおっ!?」

「実はクレイソン家の脱税事件で芋ずる式に他の貴族の不正や脱税が見付かりまして大忙しなんです!裏帳簿の金額と隠していた金額の照らし合わせだとか他に隠している財産はないかとか……卑怯なことに脱税していた金品は人目に付かないところに隠してたんですけど更に魔法道具で光りを屈折させて見えないようにしてたんですよ!戦争の時に狙撃兵が使ってた手法を利用したみたいです!」

「まぁまぁ、魔法道具を使用していたとなると対魔警察が担当となるのではないのですか?」

「そうなんですよ、最初は対魔の人達が捜査してたんですけどなにぶん証拠品が多すぎて……隠したのは人の手なんだから金品の確認作業は対人警察がやるべきだって押しつけられたんです!」


 漂う事件の匂いに好奇心を刺激され瞳を輝かせるクリスティアの様子に、事件の内容を喋るつもりのないニールを押しのけてラックが話し出す。

 しかしながら半分愚痴のように話す内容は脱税事件の話で、確かハリーがクレイソン邸に潜入して得た証拠品が大いに役に立ったと聞いている事件なので既に解決済みの事件にクリスティアはがっかりする。


「ラック、お前はクリスティーにペラペラ喋りすぎだ」

「だってぇ!クリスティー様はいつも事件解決に尽力してくれてるらしいじゃないですか!」


 ニールのラックへの当たりが強いのも、ちまちました事務仕事のような作業で苛立っているからだろう。


 事件の犯人を捕まえているのならば役に立てることはないので一気に事件への興味を失ったクリスティアは辺りを見回し、疲れ切った眼差しでお札を数えたり帳簿と睨めっこをする刑事達の顔を改めて見つめて私用で長く邪魔をしては悪いとルーシーを見る。


「皆様お疲れのようですから宜しければ珈琲を一杯、向かいの珈琲店で飲めるように手配をしておきますので皆様で飲んで少し休憩なされてください。署長はおいでかしら?」

「署長になんの用……」

「ありがとうございますクリスティー様!署長は屋上においででした!」


 主の意図を汲み取り頭を下げて珈琲店へと向かったルーシー。


 まさに女神だっとクリスティアの気遣いを称賛し、良い返事をする忠犬ラックにニールはもうなにを言っても無駄だと諦める。

 可愛い可愛い子犬に頑張ってくださいという応援を告げて勝手知ったる警察署なので屋上へと続く階段をクリスティアは軽やかに上る。


 そして辿り着いた屋上へと続く重い鉄の扉を押して開く。

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