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公爵令嬢はミステリーがお好き  作者: 古城家康
乙女ゲームと遺言書の謎
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そして始まってしまった物語⑧

「両方の事件は……ゲームでは起こらなかったのですか?」

「そうよ、あれは分岐点だったから普通は両方起きないの。どっちの事件が起こるかで誰の好感度が一番高いのかが分かるようになってるシステムなの」

「好感度……ですか?」

「うん、攻略中の対象が誰なのか分かる分岐点。いい?事件は本来だったらどちらか一つしか起きないはずだったの。例えば父親の事件だったらあなたの義弟や騎士の好感度が高くて娘の事件だったら王太子殿下や宰相閣下の息子の好感度が高いってな感じでそれぞれ好感度の高い攻略対象者達との大まかな分岐点になっていてその人と一緒に事件の推理をするはずだった……な・の・に!二つとも事件が起きちゃったから私驚いて!それでシナリオが変わってるんだって気付いたの!しかも私は巻き込まれてないし!勝手に話進んでるし!」


 ヒロインなのに茅の外だと力強く訴えるアリアドネ。


 確かに入学してから事件に巻き込まれないよう身を小さくして過ごしてきたけれども、ヒロインってそういうことに気を付けていても事件が起きれば巻き込まれるものだと思っていたし、結局事件が起きるのならば巻き込まれていたほうが事件の推移を見守ることが出来て大ボスだと思っていたクリスティアの邪魔も出来たのではないかと事件が解決するまではそう思っていた。

 情報を得るためにでも誰か一人くらい攻略対象者と仲良くしていればもしかするとロレンス家の悲劇は起きなかったのかもしれないと後悔していたというのに。


「だからね、私は事件を解決したあなたが私と同じ転生者じゃないのかって疑ったの。あなたはゲームの内容を知る転生者で、私のヒロインという地位を脅かしてバットエンディングに突き落とそうとしてるんじゃないかって。まぁそれは杞憂だったみたいだけど」


 クリスティアはアリアドネの推理通り転生者ではあったけれども乙女ゲーム、アリアドネの糸の内容を知らない転生者だったのだ。

 この世界にヒロインが存在することも自分が悪役令嬢でヒロインをバットエンディングに突き落とす存在であることも、全く知らない良識のある転生者なのだ。


 深くて重い溜息を吐いたアリアドネはこんなことになるなんてと遠い目をする。


「ゲームのハッピーエンディングだと最終的にあなたの罪は暴かれ断罪され死ぬことになるわ、だからあなたはそうならないために攻略対象者達と仲良くしてるんだって思ったのになぁ……違うんでしょ?」

「えぇ、わたくしはそのゲームを存じ上げませんので。ロレンス家の事件は望まずに巻き込まれてしまったので解決しただけですわ」

「悪の組織とかも作ってないんでしょ?」

「ふふっ、ございませんわ」


 ロレンス卿の事件もリネット・ロレンスの事件も起こしてはいないが自分から巻き込まれにはいったクリスティアのなんと白々しいことか。

 この場にユーリが居たらどの口が巻き込まれただけなどと言うのかと驚愕していただろう。


 とはいえクリスティアにとって事件というものは起きるものであって起こすものではない。

 起きた事件の謎を考え推理し解決することが彼女にとって至高の喜びなのだ。


「どうすんのよぉ……シナリオがあるってことは私、誰か攻略しないと死んじゃうんだからぁ……だから話し合ってあなたが攻略する人以外をシナリオに乗らない方法で頑張って攻略しようと思ってたのにぃ」

「わたくしが黒幕ではないのでしたらあなたが殺されることはないのではないのですか?」

「そんなこといったって時期は違えどロレンス家の事件は起きたわけだし……何処までシナリオが同じで何処までが違うのかなんて分からないじゃない。あなたは知恵を授けたり命令を下したりするだけで直接手を下してなかったからもしかしたらあなたの居ない暗殺組織が私を殺すってこともあり得るでしょ?」


 なにもしないほうがリスクじゃないと机に頬を預けてブツブツとマイナス思考に襲われていくアリアドネだが、一介の平民を暗殺組織が殺す理由などそれこそないのではないのかとクリスティアは思う。


 アリアドネは被害妄想が少し強い子なのかもしれない。

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