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公爵令嬢はミステリーがお好き  作者: 古城家康
乙女ゲームと遺言書の謎
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そして始まってしまった物語⑦

「ゲームのシナリオなんだからそんなに殺気立たないで……いい?ラビュリントスで巻き起こる事件のほとんどはクリスティアが黒幕なの。学園に通う三年の間でヒロインはその数々の事件に立ち向かい解決して、裏で糸を引いているあなたを見つけ出し最後には断罪するの。卒業式の日に攻略対象から赤い糸で出来た薔薇を送られたらハッピーエンディング。それ以外はたとえ最終シナリオにいけたとしてもバッドエンディング、あらゆる方法で殺されたりするのよ」


 乙女のように瞳を輝かせて赤い糸の薔薇を差し出されるシーンを思い出していたアリアドネだったが次第にその顔色が曇っていく。


「このゲームのヒロインになったって気付いたとき正直言って怖かったわ。どのルートでも誰かしら死ぬわけだし、その人達を目に見えて助けようとしたら私まであなたに殺されるんじゃないかって入学前は夜も眠れなかったわ。だから学園に入学したときは誰かを攻略する気なんてなかった。なるべくあなたの目に付かないようにしつつ遠くから観察して誰かが危険な目にあったらこっそりバレないように忠告だけしようかなってくらいにしか考えてなかったの。私が知らんぷりして誰かが死んだら寝覚めが悪いわけだし……」


 だからクリスティアのことを覗き見ていたのかと納得するが、どっちにしろその覗き見はルーシーに気付かれていたくらい稚拙なものだったのでそのうちクリスティアにも知られることとなっていただろう。


「でもあなたの噂はそれはそれは酷いものなのに学園では全然、大小関わらず事件っていう事件も起こらないし、私と攻略対象者達とのフラグが立つわけでもないし、あなたの様子もゲームとは違うしで、ゲームとは似てるけどやっぱりここは違う世界でこのまま無事に卒業出来るんじゃないかなって期待してたんだけど……時期は違うけどリネット・ロレンスの事件が起こったもんだからさ私やっぱりってなって相当焦ったわけ!」

「ゲームでもロレンス家の事件は起きますの?」

「うん。リネット・ロレンスを殺した男は浮気最低くそ野郎である日、酒場で酔っ払って浮気相手が妊娠して結婚を迫られているって愚痴を溢したことからある組織に目を付けられるの。それが殺人を犯すきっかけ。リネットを亡き者にすれば婚約者と結婚も出来るし家督も滞りなく継げるんじゃないのかってそそのかされて事件の知恵を授けられて殺人を犯すの。その闇の組織はガイルズ家が邪魔だったから没落させようとしたみたい。そしてその組織の大ボスがあなた、クリスティア・ランポールでラビュリントス王国の闇のフィクサーなの!」

「まぁ、わたくしモリアーティ教授の立ち位置なのですね」


 この国の悪事の大半はわたくしの手によるものだなんて。


 それはそれで胸が高鳴るほど素敵な話だけれどもクリスティアが敬愛しているのは卵形の天才的な頭脳を持つ名探偵なので犯罪組織の黒幕では立場が180度違う。


「モリ?なに?」

「いいえ、どうぞお話をお続けになられて」


 同じ世界から転生していたとしても趣味が違うと話は合わない。


 この場にあの愛しき探偵小説があれば読んで聞かせるというのに……思い出す度にもう二度と名探偵達の物語を拝聴することが出来ないことが、心の底からクリスティアは残念でならない。


「うん、だからね。私てっきりあなたが犯人だと思って慌てて警察にリークしに言ったの。あなたが全部裏で操ってる悪い奴なんだって、ちゃんと調べてくれって。でも全然相手にされなくてさ……こうなったら自分で調べるしかないのかとやきもきしてた所であなたが事件を解決したって言うじゃない、そりゃもう驚いたわよ!まさか自分で企てた犯罪を自分で解決するなんて馬鹿なことゲームのクリスティアだったらしないし、しかもよくよく聞いたら父親と娘の事件は両方起こってて両方あなたが解決したって!ほんとあり得ないわ!」


 興奮した様子のアリアドネの言葉にクリスティアは引っ掛かりを覚えて小首を傾げる。

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