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公爵令嬢はミステリーがお好き  作者: 古城家康
乙女ゲームと遺言書の謎
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疑惑の遺言書④

「まぁ、勿論ですわフランさん。そうですわね、今日の放課後までにローウェン伯爵宛てにご自宅へお伺いする旨の手紙をお書きいたしますのでルーシーに届けさせますわ。正式な訪問という形を取ればそちらにお伺いしても怪しまれることもございませんでしょう」

「ありがとうございますクリスティー様!」

「今日訪問しては駄目なのか?わざわざ正式な訪問にする必要はないだろう?」

「殿下、こちらの手紙を本当に親切心から送ったのであれば差出人を隠す必要はございませんでしょう?友人だと言うのならば尚のこと……隠された本人は余計怪しむでしょうし、質の悪い悪戯だと捨て置く可能性もございます。現にミス・ヴィオラは怪しんでおりますし」

「確かに」

「もしこの手紙が切実であるのならば捨て置かれた場合、他の手段を講じる必要があるのでミス・ヴィオラの動向を窺っている何者かがいる可能性がございます。それは悪戯だった場合も同様で、ミス・ヴィオラの反応を見るのが目的でしょうからどちらにしても様子を窺っているものと思います。お休みを切り上げたミス・ヴィオラがフランさんにご相談したことは知られているでしょうからなんの予定も無くわたくしがお伺いするのは軽率かと思います。善意ある者ならば良いのですが悪意ある者の可能性もございますのでそういった方々はわたくしの名を聞いただけで不安を煽られてしまうでしょう?それでなにか不都合なことになってしまうのは避けたほうが宜しいかと思いますのでフランさんではなく伯爵に会うご用向きでご訪問するという形を取ったほうが余計な心配をせずに済むというものですわ」


 確かにそれはそうだ。


 悪という悪にとってクリスティア・ランポールの名は自分以上の極悪としてビュリントスでは名高い名だ。

 その推理という暴き立てに慈悲の心など無く、過去に過ぎ去ったどんな些細な事件であれど心に一つでもやましいことがあればその緋色の瞳で見透かし、暴くかもしくは交渉の道具として一生涯の弱味として握るのだ。


 どんな理由であれ手紙を送った人物の神経を逆撫でしそうなクリスティアの来訪を怪しまれないようにしておく方が良いだろう。

 自分が世間でどう思われているのかよく理解しているクリスティアの提案に納得したくはないけれども納得したユーリの前で膝に乗せた拳を振るわせていたロバートが勢いよく立ち上がる。


「お、俺も共に行く!」


 クリスティアの話を聞いて不安になったのか……フランに少しでも危険があるのならば守らなければっと騎士道精神が沸き立ったらしいロバートに、急に立ち上がられて驚いたフランはビクッと体を震わせる。


 フランにとって目下の危険人物は他ならぬロバートだろう。


「アスノット様もですか……?」

「まぁ、とても良い案ですわ」


 意気込んで参加を表明したロバートだが、単純明快な思考でお世辞にもこういった謎を解いたりだとかに対しては器用とは言い難いので居たところで役に立つとは思えないのだが……。

 なのでてっきり参加を拒絶するかと思っていたクリスティアのまさかの援護にロバートを含めた一同は驚き、戸惑いを見せる。


「何処に手紙を送ってきた方の仲間が入り込んでいるのか分からない状況ですもの、お話を聞くのにしたって番犬が共に居たほうがなにかと都合が良いこともありますわ」


 クリスティアが言うのならばと渋々だが納得するフランにたまには良いことを言うではないかとロバートの士気も上がる。

 あとはマーシェ邸に鼠を仕込めたら良いのだけど……っと呟くように思案するクリスティアの横顔にユーリは不安の色を濃くする。


「クリスティア、状況の報告は常に私にするのだぞ」


 とはいえローウェン邸へ行くときは自分も付いていくつもりのユーリから不安を滲ませた厳しい声音での忠告をされるが……はて、話を聞くだけなのになにを不安に思うことがあるのかしらっとニッコリ微笑むばかりで了承も否定もしないクリスティア。

 これはもう絶対報告する気がないことはよく理解できたので、フランを守る片手間にでもロバートを見張りをさせて(死ぬほど嫌がるだろうが)危険なことに首を突っ込まないようにさせなければなとユーリは溜息を吐くのだった。

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