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放課後アンノウンズ  作者: 猩猩
第二章〜迷ヒ猫と自傷少女〜
13/14

嘆き


 全身に痛みが巣食っている。

 まるで、痛風にでもなったかのように何をしても激痛が走る。内だけじゃない、皮膚もヒリヒリとする。まるで、酸でも浴びたように。

 着ていた合羽は彼を包む毛布替わりにしている。だから、この肌を守るものは何も無い。雨に打たれた暁には狂ってしまいそうなぐらいの痛みが私を襲うだろう。けれど、雨はいつの間にか止んでいた。それでも、痛みは断続的に生まれている。

 どうして、こうなったのか。理由なんて分からない。

 でも、感じる。

 この森が私を拒絶しているのだと、これ以上踏み込んではならない、と。

 それでも、わたしは歩かなければ。

 胸の中の彼を見つめる。傷だらけの彼はどこか遠くを見つめていた。

 視界が悪い。

 どうやら、雨の代わりに霧が出てきたようだ。

 雨からすぐに霧になるなんて、この森はどうなっているのか。そんなことも今ではどうでもよかった。

 喉に焼けるような痛みを覚えた。痛みのそれ自体にはもう慣れてしまった。けれど、体はそうはいかない。

 大きく咳き込む。

 左手で口を抑える。

 彼を抱える右手ではなく、左手で。

 ひとしきり咳き込むと、息を整える。そして、ふと、気がついた。口を抑えていた手の平に赤いものが見えた気がした。幻覚だろう、と割り切って気にせずに歩みを進める。

 けれど、体がそれを許さない。

 フラフラと体が揺れて、バランスを崩す。

 何とか近くの木に左手を置いて転ぶという最悪は防ぐ。少しだけ息を整える。

 大きく息を吸って、吐く。

 しかし、突然、再度喉に痛みが走る。

 げほげほ、と品のない咳をする。喉に何か温いモノが登ってくる感覚。

 瞬間、私は吐いた。

 まるで、血の塊みたいに真っ赤な吐瀉物を地面に吐き出す。

 胃の中身全てを吐き出したような気がした。

 荒い息を整え、自分の一部だったそれを見る。

 血の塊、としか表現の出来ない吐瀉物。これが本当にこの体から出てきたのなら、まるで私は結核の患者のようだ。

 ショックで頭の中が真っ白になる。

「私、どうしちゃったの?」

 酷い掠れた声で、私は呟いた。

 胸の中の彼が、私の顔を見上げた。まるで、心配しているかのように。

「大丈夫、大丈夫だから」

 彼の頭を撫でる。

「…本当に、大丈夫だから」

 無意識のうちに呟いたその言葉は彼へ宛てた言葉ではなかった。













 意識が、ぼんやりとする。

 この足は前に進めているのか不安だ。痛みがもう感じなくなってきた。どうじに、私の中にある全ての感覚が消えかかっている。

 どうして、わたしは立てているのかわからない。

 そう思った矢先に、この体は横に傾き湿った腐葉土の上に倒れる。やっぱり、いたくない。本当ならないてしまいそうなぐらい痛いのだろう。

 でも、わたしにその痛みは伝わらない。

なんで、

 その時、死にかけの私の耳に小さな声が聞こえた。

「あ、あぁ…ごめ、ん、ね」

 彼に言う。

 だめだ、こんなになっては。

 この子のために私は動いているのに、諦めちゃだめ。

 どうにか体をうごかして、近くの木の傍にまで持っていく。

 少しだけ休もう。

 木の幹に体を預けて、深く息を吸う。

 しかし、吐き出そうとするとそれは血の塊となって私の口から排出された。

 苦しい。

 いまにも、この目を閉じてしまいたくなる。

 いますぐにでも、この苦しみから解放されたい。

 体が訴える。

 抗わなくちゃいけないのに…それなのに、体が言うことを聞かない。

 本当に、だめなわたし。

 いや、最初から決まっていたのだ。わたしには、なにも成すことはできない。

 だれかを、きずつける事しかできないのだから。

 なにもできないくせに、わたしはでしゃばって。

 ひとにめいわくをかけるだけかける。それだけしかのうがないのだから。

 叫ぶ。

 焼けた喉が醜い獣の叫びを生み出す。とうてい、ひとのものとは思えないほどの醜い叫びを放った。

 自分でも分からない、この感情はなに?

 怒っているから、悔しいから、それとも悲しんでいるから?

 ちがう、そんなのわたしがもっていいものではない。

 ひとのきもちさえわからないこどもが、そんなものもっていていいはずがない。

 わたしのような、こどもはいなくなってしまえばいい。

 あ、あぁ、やっぱりそうだったんだ。

 私には許されない行為だったんだ、こんな身の分際で命を救おうだなんて、おこがましい。

 救える力など無いくせに。

 瞼の下から頬に、ナイフの切っ先で裂かれているような痛みが走る。

 呼吸がおかしくなって、何度か嘔吐く。

「ごめ、んね…こんな、私があな、たの側に、いて」

 声帯がうまく機能しない、これは叫んでいたからなのか、それとも本当に喉が焼けてしまっているからなのか。どっちにしても、私の声は彼にはとどかないのだろう。






どうも、筆者です。

前回に続いて、今回は戌井 一子という少女の内面を書きました。1章でも見せていた異常な自己肯定感の低さや、時々見せる怪しい言動など、これらの正体は次回で書いていくつもりです。

あと、この2章では彼女自身の姿を描写できるタイミングが無く、どうにか何処かに入れようかな、と考えていたのですが、それも不可能そうなのでここで補足したいと思います。

今まで書いてなかったのが不思議ですが、戌井 一子は黒い髪のロングヘアです。あと、背は平均よりも少し高め。

…これだけです。

これだけが言いたかったんです。

何よりも重要な髪型の情報を描写したかったんです。

それでは伝えたい事も言ったので今回はこの辺りで。

誤字や脱字、おかしな文章があればご報告して頂ければ幸いです!


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