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コインシデンス  作者: 裏地見ル 玲人
第1章 主席のお膝元
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第五話 新播磨市の異変

党大会開催時、大和人民共和国の首都である新播磨市では、日本社会党の党員集会が行われていた。党員集会というだけあり、党委員長や幹部たちがほぼ全員出席していた。来賓の数は少なく、大和人民共和国国家評議会議長のみで、少し寂しいものだった。しかしながら、党員集会は熱気に包まれていた。委員長の演説を受けてのことだ。

日本社会党委員長である山村治郎(やまむら じろう)は、歓喜する党員たちを前にして演説を行った。

「親愛なる党員諸君、我々は今日、大和人民共和国政府にある要求を飲ませることにした。この共和国は連邦憲法で独立主権国家と定義されているにもかかわらず、札幌のロシア人によって統治されてきた。民族社会主義の実践も、はるか彼方だ。だが、我々は今日、来賓の国家評議会議長にある要求を飲ませるのだ。それは、この共和国を、東日本、すなわち日本連邦人民共和国から独立させ、東西両国につかない中立国として歩もうというものだ。極東革命期より前線となっているこの共和国一帯は、常に労苦を押し付けられてきた。西につかないというプライドをへし折られたこともあった。でも、それも今日で終わりだ。苦悩の日を超え、再び自由と独立を勝ち取ろうではないか!」

こうして終了した演説を聞いていた国家評議会議長は、震え上がって退出しようとした。だが、社会党員に囲まれてしまい、事実上社会党本部に人質にされてしまったのだ。

なおも逃げ出そうとした国家評議会議長の中村佳子(なかむら よしこ)はとにかく、共和国人民警察の助けを待つしかなかった。

山村は、中村に要求を飲むよう詰め寄った。中村は答えず、黙って椅子に座っていた。

暫く後、社会党の党員たちが新議事堂前でのデモ参加のために、党本部を後にした時を見計らって、中村は党本部を出ようとしたが、監視役の党員が銃を向けた。それゆえに一度は着席した。

数分後、監視役が交代する隙を見て脱出しようとしたが、彼女の試みはついに成功しなかった。

バァン!ドォン!バンバンバン!

「フゥー」

「やったぜ、国家評議会議長を消してやった!党員たちに知らせてやろう!」

国家評議会議長にして日本共産党大和支部委員会委員長の中村佳子は、監視役の党員に撃ち殺された。32歳の、日本共産党の至宝は無念にも失われてしまったのだ。

ーーーーーーーーー

新議事堂前

国家評議会議長が殺されている頃、日本社会党員たちは、熱狂していた。今日この日に、京畿の共産党員や札幌のロシアの犬とおさらばできると思っているからだ。党員たちは熱狂的に叫んでいた。

「政治犯を解放しろ!自由と独立を!」

「ロシアの犬は出て行け!京畿人もな!」

彼らは自分たちこそが真の日本人であると考え、人民労働党員や日本共産党員など同胞とは微塵も思っていなかった。

そんな時だった。笹塚明美が解放されたのは。

暴徒化した社会党員の一部を見て、人民共和国政府職員が怖がって政治犯を全員解放し、京畿人民共和国領へと逃亡したのだ。大和人民共和国の政府職員はほぼ全員が京畿人で、日本共産党員だったためだ。誰もいなくなった国家評議会ビルに暴徒が突入し、人民共和国旗を下ろして日本社会党旗を掲げた。解放された政治犯らもここに加わり、祝杯を挙げた。ここに、大和共和国臨時政府が誕生した。

---------

大和共和国臨時政府が成立する少し前、新東京市大森地区で羽山に連絡をとっていた僕は、連邦主席の緊急演説を聞いて驚いた。大和人民共和国で暴動が発生したらしい。笹塚教官は無事だろうか。羽山に相談すると、新播磨市に行きたいとのことだった。山野さんがついてくるらしいが、そんなことを気にしてられない。僕も新播磨市に向かう為の準備をしに、家に帰った。

今話で第一章は終わりです。

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