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傾国⑤

 いま佳奈が懸命に足捌きの練習をしているのは望叡学園高校の剣道場である。佳奈が入学したこの高校の剣道部は監督の小森田(まこと)が足捌きを重視しており、面を着ける前に必ず様々なパターンの捌き方を練習させた。

 新入部員の入る時期と新チーム結成期には多くのとくに時間を割く。現に佳奈は今、円の形に回る続けるすり足を30分も続けている。

「虎バターだ…」

 ひたすら回り続けるこの稽古はあの絵本をもじって虎バターと呼ばれ、部員たちを苦しめた。


 8月のインターハイで一年生ながら佳奈は次鋒で出場。望叡のベスト8に貢献した。優勝は愛知の菅田北高校だった。


 夏休みが終わり後期が始まる。9月中旬、全日本女子剣道選手権が開かれた。出場選手64名のうち、最年長は38歳。最年少は16歳の久本佳奈である。

 さかのぼること2ヶ月前、全日本女子選手権の予選が警察学校の体育館で行われた。高校生の出場資格は高校県総体個人戦で上位8名に入ったもの。その末席に彼女を滑り込む。

 そして来たる予選会当日、彼女はただ一つの枠を獲得した。これには小森田もたまげる。両親も驚く中、当の本人も夢だと疑った。

 そして今、本大会の佳奈の1試合目が始まろうとしている。


 この大会は4人一組に分かれて総当たりを行い、勝ち上がった16名で決勝トーナメントを戦う。

 最初の相手、滋賀の山井は創新大学の三年生。佳奈は地に足がつかない気持ちのまま3分が経ち延長に入る。打っていくのは覚束ないが、捌いて捌いて山井の厳しい攻めを耐えている。延長も10分になる頃、佳奈はスッと間合いに入る。決め手がなく集中を欠いた山井は足を止めて見入ってしまい、佳奈のメンで決着した。

 おそらく望叡に入る前なら同じ間合いでメンには跳ばなかっただろう。ここぞというところで間合いに入るのは身長の都合で勝ちパターンにしていたが、もっぱら手元を狙っていた。

 「メンもあるだろう」と小森田は言った。そこで攻め込んでいくつかメンの打ち方を練習したが、この大舞台で体が動いたのは自信になる。


 調子が出てきた佳奈はリーグ2戦目の丸岡(埼玉)、大口(青森)をどちらも時間内に下す。


 トーナメント1回戦は大阪の浜田。浜田は熊本の県立中央高校から大阪府警に入った選手で、身長が高く力強い剣道をする。

 試合開始と同時にメンに跳ぶ浜田。佳奈はリーチを見誤って早々に先制されてしまう。そこから佳奈は懸命に仕掛けて惜しい場面もあったが、無情にもブザーが鳴る。

 しかし最年少の溌溂とした戦いぶりに会場からは拍手が送られた。

「今度は勝って拍手をもらおう」

 手応えと清々しさの中で、佳奈はそう思った。

某強豪高校のjkを見てると背負ってほしいと思えるほどたくましい体つきの選手が5人揃っててチビりました。

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