心臓を刺されて
突如、地獄と化した教室。憑黄泉と名乗るクラスメイトに心臓をナイフで刺された智也。
段々と意識が遠くなっていく。智也は死を悟っていた。今日が自分の命日だと分かっていた。だって、憑黄泉の目は笑っていたからだ。笑った目で智也に近づいて来たからだ。
逃げたくても逃げれなかっただから死を悟ったのだ。
熱く流れている血が胸から飛び出ている。心臓がバクバクといっている。体は生きようとしているのだろうか。意識が薄くなってきた。
脳内に様々な記憶が呼び起された。これがフラッシュバックというやつかと智也は思いつつ、静かに呼吸が止まるのだった
・・・
「起きなさい。起きなさい智也」
智也を呼ぶ声。優しい女性の声。智也はゆっくりと目を開けた。そこは、雲の上だった。これが天国というところなのだろうか。目の前には声の主である綺麗な女性がいた。輝く衣も身に纏い神々しさが半端ないって。
智也は、誰なのか気になり、「ど、どちら様ですか?」と声を掛けた。すると、女性は優しく笑みを浮かべ、
「私の名前は、天照。日本神話に出てくる神様です」
これは異世界に転生しなさいみたいな。最高、この展開を待っていた。智也は思わず、
「これから異世界にてんせ」
「いいえ、違いますよ」
天照は即否定した。智也は、
「え、いやいやいや、死んだら異世界転生が普通でしょ」
「何を言っているんですか」
天照は深いため息を吐く。
「最近、異世界転生とか訳の分からいことを言いだす死亡者が多いんです。本当は、死ぬ少し前に戻して生かすのが正しいです」
「そ、そんな馬鹿な」
智也は膝から崩れ落ちた。
「でも、今回の場合は、少し前に戻したとしてもあなたに生存の余地はありません。そこで、この刀を差し上げますので、生き延びてくださいね」
天照は、黒い鞘に入った刀をゲートから取り出し、智也に渡した。
すると、智也の身体は光りだした。
「それでは、少し前の時間に戻るのです。……あと、二度目はありませんので、二度目は地獄ですから」
「え、そういうことは早く」と智也は言いかけた時には、少し前の時間の元の世界にいた。
状況を確認すると、わーちもとい菅原 美玖の釣り合う男は佐藤君だけの所だった。
友達に見せたら、お前は始まり方が下手だよなと言われた。自覚しつつ、これから面白くなるように努力します。