6話 殺人鬼と毒殺
感想を頂きました。
ありがとうございます、執筆の励みになります。
皆様どんな些細な事でも構いませんので、気軽に書いて下さいね。
そろそろこの町から出よう、まだ暫くは大丈夫だと思うが念のためだ。
犯行現場からは出来るだけ早く離れる、これは鉄則だからね。
大丈夫だ金は十分にある、私は電車に乗り込んだ。
何度か乗り換えながら電車に揺られること数時間、電車は嫌いだ。
私は三半規管が弱いのか本を読んだりしていると、すぐに酔ってしまう。
仕方なく移り変わる景色を眺め時間を潰した。
退屈な電車の旅もようやく終わり目的の県に着いた、何度か念入りに下見をしておいた県だ。
どこかって?ヒントは大仏と鹿。
私のいた町に比べればマシだがここも結構な田舎だ。
私は何度か下調べしておいた私立中学校に忍び込む、私立中学校の方が市立中学校に比べるとかなり警備が緩いからな。
一応校門には監視カメラがあるが、あんな目立つ所にあるのにわざわざ校門から入る奴なんて居るわけない。
おそらく『保護者への防犯してますよー』というアピールだろう。
申し訳程度にしかない低い塀を、容易く飛び越える。
荷物は必要最低限のモノを残し駅のコインロッカーに入れておいた。
重いので逃げる事になった場合邪魔になるし、忍び込む時に無駄に音がなったりして困るからだ。
給食センターの配送車が給食を持ってくるのがAM11時00分頃、教員が扉を開けに来るのが来るのがPM12時30分だ。
現在時刻は11時24分、余り時間は無い。
作業は時間に余裕を持って終わらせておきたい。
急がないと。
給食室に入る為には、扉を開ける必要がある。
扉には鍵がかかっているが調べた情報と変わっている等といったことも無く鍵は南京錠だ。
実は南京錠は何度か練習さえすれば簡単に開けられる様になる。
私は明るいLEDで中の構造を確認しながら、精密機器用の小さいマイナスドライバーを使い器用に開ける。
もし職員が来たら計画がパーだ、焦る気持ちを抑え音がならない様にゆっくりと慎重に扉を開ける。
今日の給食は下調べしておいた通りカレーだ、カレーは色が濃いし匂いも強い。
だから毒物を混ぜるには最適だ。
私が今回入れるのは、山で何時間も歩き回り大量に採取してきたシロタマゴテングタケとドクツルタケだ。
私がこのキノコを選んだ理由は主に2つある。
この2種類のキノコの毒。
つまりα-アマニチンは消化管からの吸収が早く1時間程度で肝細胞に取り込まれる、さらにα-アマニチンは遅効性で有りながらも強力な毒性を誇る。
その毒性は毒キノコ最強ともいわれ、約8グラムで1人の人間の命を奪うほどだ。
もう一つの理由...選んだ理由としてはコチラが大きい、それは中毒症状が2段階に分けて起こる事だ。
正確にはまず食後24時間程度でコレラの様な激しい嘔吐・下痢・腹痛が起こる。
通常誰も給食に毒キノコが入っているなど疑わない、症状も類似している為ただのウイルス性食中毒と認識されるだろう。
ここでこのキノコの特性が生きる。
その後、小康状態となり1度は症状が回復する。
だがその数日後、肝臓と腎臓等内臓の細胞が破壊され劇症肝炎様症状等を呈し超高確率で死に至るのだ。
さらにこのキノコの毒性分のアマトキシン類には゛解毒剤は存在しない ゛。
仮に原因がこのキノコである事が分かったとしても、既に手遅れ。
助かる可能性があるとすれば6時間以内に胃袋を洗浄し、血液透析を行う事だが勿論間に合うハズも無く死に至るだろう。
勿論仮に死ななかったとしても、重要な内臓に大きな障害が残る。
マトモな生活を送る事は出来ないだろう。
どうだい?最高のキノコだろう?
まさに最適、うってつけだ。
そしてそのキノコを程よい大きさに切って煮込む、そうすると元々の色が白い事もあり給食に入っているマッシュルームと見分けがつかない。
キノコの量的に確実に殺すには全てのカレー鍋に入れる事は出来ない、取れたキノコは合計1.8kg。
頑張って集めたのだがそれだけしか取れなかった、それを均等に5つに分けて煮汁ごとキノコを給食のカレーに入れて良く混ぜ合わせておく。
40人5クラス+担任と副担任で、だいたい210人。
さて何人死ぬかな?
私はワクワクと結果を楽しみにしながら、誰にも見られる事無く学校から去っていった。
被害者数︰43+0/210
殺人鬼による殺人鬼の為の鉄則コーナー
その1︰犯行現場からは出来るだけ早く離れる。
その2︰犯行は出来るだけ素早く迅速に。
その3︰つまりスピードが命。
シロタマゴテングタケやドクツルタケは、猛毒のキノコです。
食べると高確率で死亡します、大体毒キノコによる死亡事故はコイツらが原因と言われてるくらいです。
しかし食べて運良く生き残った人によると、とても美味しいらしいのです。
他にも有名所でいくと、言わずと知れた猛毒テトロドトキシンを多く含む「フグの肝」もとても美味しいらしいです。
毒のある食材は何故美味いのか...?
ちょっと考えただけで様々な憶測が思い浮かびますが、実際何故なんでしょうね。