10話 殺人鬼と捜査撹乱
前回は少し、失敗をしてしまった。
だが練って練って練りまくった計画だからこそ、イレギュラーやミスへの対策はある。
想定される全ての出来事に対する対処法はあらかじめ考えてある。
そう、失敗するのは問題は無い。
問題は失敗からどう繋げるかだ。
私の行う全ての出来事は成功へと繋がるべきだ、いや繋げてみせる。
さあ、今回の出来事はイレギュラー。
とりあえずこの辺の地形を確認しておこう。
追いかける際にも、待ち伏せる際にも、隠れる際にも、そして逃げる際にも役に立つ。
見知らぬ土地で、道を確認するのは必須だ。
ん〜?この辺が良いかな?
とりあえず夜になるまで時間を潰そうか。
私は本が好きなんだ、図書館にでも行こう。
さて、図書館に着いたのだが。
私の特技にフォトリーディングという技術がある、見たものを写真の様に一の絵として一瞬で記憶するというモノだ。
コレは先天的に持ってる人もいれば練習して出来る様になる人もいる、出来れば結構便利だね。
ちなみに私は前者だ。
この技術を活用すれば本のページを絵として記憶し、後で思い出して読む事ができる。
ここ最近新しく記憶する事は無かったからねー、時間のある今の内に何冊か記憶しておこう。
ペラペラペラペラ...図書館は人気が無いのか人が少ない。
静かな図書館に私の本を捲る音だけが響く。
「お客様...そろそろ閉館時間なのですが...」
突然司書の女が喋りかけてきた。
私は慌てて時間を確認する。
午後8時...いつの間にか物凄く時間が過ぎていた。
そして私の目の前には沢山の積み上げられた本のタワー
「ああー」
そんな声と共に、ようやく此処で私は何が起こったか察する。
フォトリーディングは結構集中力を使う、そして私は集中し過ぎると少し時間を忘れてしまう癖がある。
つまり、こういう事だろう。
時間を忘れて本を“覚えていた”。
まあ良い予定通り時間を潰す事は出来たのだから、さて日も暮れた様だしそろそろ行動を開始しますか。
今回はこれまでと違い死体を目立たせる必要がある、それに関しては問題無い。
いつも通り現場に放置しておくだけで十分だ。
さてさて...ターゲットはどうしようかな。
とりあえず人通りの少ない路地裏に入ろうか、ここなら狭いので私のアイスピックが役に立つ。
ナイフが主に振る事による“線”の攻撃なのに対してアイスピックは突く事による“点”の攻撃、細く狭い場所でも取り扱うのは容易い。
むしろそういう場所でこそ真価を発揮すると言っても良いだろう。
先程確認しておいた細い1本道にたどり着く、此処で暫く待ち構える。
すると、酔っ払っているのだろうか?
千鳥足でフラフラと歩いて来る中年のオッサンが向こうから歩いて来るのが見えた、コイツにしよう。
アルコールによる酔いは判断能力や身体能力を著しく低下させる、他にも様々な臓器にダメージを与え病気になる確率も跳ね上がる。
酒を飲む人間の思考は理解出来ないね。
そのまま男の方へと歩いて行き、私は男とすれ違う。
そしてそのまま振り返り後ろから思いっきりアイスピックを突き出し、脊椎を貫く。
よしまずは1人、私は素早く立ち去り別の1本道へとやって来た。
さて次はどんな獲物がやってくるかな?
おや、アレはカップルかな?
うえーこんな場所で突然キスし始めやがった、もうコイツらで良いか。
それにしても男の方はプロレスラーみたいにムキムキだな。
複数相手に不意打ちをかける場合、より強い者を狙った方が良い。
何故なら不意打ちでは相手は防御したりする事は難しいからだ。
いくら日々肉体を鍛え上げようとも、どれだけ技を練習し磨き続けたとしても、どんな優れた武器を持っていようとも、使えなければ意味がない。
私はキスする事に夢中になっているカップルにコッソリ近づくと、いつもの様に男の首へとアイスピックを突き刺した。
もうこの作業も慣れたものだ、流れる様に突然の事に驚き固まっている女の首にも突き刺す。
もう、そろそろ良いかな?
今なら終電にもギリギリ間に合う。
さあ来た道を引き返すぞ、これまでとは真逆の方向に向かう電車へと私は乗り込んだ。
被害者数︰49+0/210
見知らぬ土地では地形を出来るだけ調べるべし。
フォトリーディング出来たらチョットだけ便利なんですよねー。




