第45話 アメシェラ戦役
時は、来た。
エメフィーは今、テントにいる。
その周囲にもテントが並ぶ。
ここは今日の野営場所。
外からは暖かく湿った空気が入ってくる。
そして、少女たちのはしゃぐ声が聞こえてくる。
今日の宿泊の地、それは温泉の湧き出る山脈に囲まれた谷だ。
自然に湧き出た温泉。
それに少女たちで、堰を作ろうとしたが、あまりに熱いので、川の水を流し込んでから堰を作り、温度調節をした。
そんな天然の浴場で、山奥とはいえ、大空の下で、少女たちが裸ではしゃいでいる。
だから、エメフィーはテントの中に引きこもるしかないのだ。
一応は当然のごとく、一部に仕切りの入った場所があり、誰が言うまでもなくエメフィー専用浴場となっている。
そこにはもちろん入りたいし入るつもりだ。
エメフィーも風呂は大好きだ。
特に今日は朝から進軍してきたし、ハーピーの血を多少は浴びてしまった。
それはぜひとも洗い流したい。
だが、入るのを躊躇う理由が二つある。
まず一つ目は、もしかするとこれまで通り、マエラとシェラが入ってくるのではないか? ということ。
もちろん布一枚隔てただけの簡易専用スペースだが、自分が男の子である以上、出来れば女の子であるあの二人とは入らない方がいいだろう。
何しろ恥ずかしい。
それともう一つ、そのマエラのことだ。
あの時は勢いで出発したので、一言も言葉を交わせなかったが、大丈夫だっただろうか?
その後ここに到着したとき、ついて来ていることを確認してほっとしたが、まだちゃんと話が出来ていない。
話そうとすると、逃げるようにその場を去ってしまう。
ちゃんと話をする前に、落ち着いてしまいたくはなかった。
話を、しに行こう。
今日が終わる前に、きちんと話して、自分には今後もマエラが必要だということを話して、元気づけよう。
最初は拒否されるだろうが、いつもの自分のように強引に会って話をしよう。
「よし!」
エメフィーは立ち上がる。
今すぐにでも、マエラの元へ行って──。
「エメさまぁ、お風呂に入りましょう!」
そう決意したエメフィーのテントに入って来たのは、いつもの水鳥の模型を持ったシェラと、その後ろで隠れているが、シェラより背が高い上に、とんがった帽子をかぶっているので全く隠れていないアメランだった。
「ちょっと後にしてくれないかな? マエラと話に行きたいんだ」
「マエラさまは、さっき誘ったんですがぁ……今は誰とも会いたくないそうです……」
「うん、そうだと思うけど。僕はちゃんとマエラと話をして──」
「そんなのいいですから! 行くですぅ!」
「ちょ……っ! 引っ張らないで!」
シェラに引っ張っられるエメフィー。
別に体格差も腕力差もあるので、止まれるが、シェラは子供のころから一緒にいる可愛い妹のような存在であり、その無邪気な要求には逆らえないのだ。
「どうしてアメランもいるんだよ!?」
「アメちんはどうしてもエメさまのおちんちんが見たいようなので連れてきました」
「シェラさん! それは言っちゃだめです~」
アメランが慌ててシェラの口を閉じようとするが、緩慢すぎるし、そもそも遅すぎるため、シェラは多少揺れただけだ。
「……いや、それが目的なら絶対一緒に入らないよね?」
「そんな~」
「エメさま、アメちんが可哀想ですぅ。一緒に入ってあげてください」
「何で僕が悪いことになってるの?」
エメフィーとしては当たり前のことを言っただけだが、何故かエメフィーが悪いムードになってしまっている。
「あのさ、これからはもうシェラとも別に入ろうと思ってるんだよ。男の子と女の子が一緒にお風呂に入っちゃ駄目だろ?」
「今まで毎日入って来たのにです?」
「いや……そうだけど」
確かにこれまで毎日やってきた習慣を、女の子じゃなかったからとやめるのも変な話だ、と言われればその通りかもしれない。
だが、エメフィーの気持ちとして、自分がそうなったらどうなるか、を考えてしまう。
エメフィーの女の子としての心では、男の子の裸なんて恥ずかしくて見られないし、自分の裸を見られたら恥ずかしくて死んでしまいたいと思うだろう。
だから、自分が男である以上、見るべきではない、と思っている。
「それじゃ、もう、あたし達と入ってくれないんですかぁ……?」
「だから! そんな目で見ないでよ! 卑怯だよそれ!」
シェラの切なげな目は、エメフィーにとっては強力な武器だ。
それこそ、マエラの魔の眼よりも。
「入りましょう~! みんなで仲良く色々考えましょ~」
「ちょっと!? アメランは違うでしょ!?」
エメフィーはシェラとアメランに引っ張られて、温泉の一部、仕切りで囲まれたところに向かう。
そもそも、それ以外の部分は一切仕切られていないので、そこかしこに全裸の女の子がいて、居たたまれなくなって、仕切りの中に連れ込まれた。




