第30話 エメフィー女騎士団 進軍!
「みんな、ありがとう! じゃあ、行くよ? 槍剣隊から、魔法隊、弓隊の順で行進開始! みんな僕に続いて!」
かくして、エメフィー女騎士団は王子のエメフィーを先頭に魔姫に向けて進軍することに──。
「お待ちください、殿下」
なりかけたが、マエラに止められる。
「なんだよ、マエラ、今一番格好いいところだったんだけどさ!」
エメフィーはこのシーンを歴史に残そうと、あえて勇ましく決めたのに、それを邪魔されて、さすがにイラっとした。
「殿下を先頭に行進させるわけには行きません。殿下は我々の最後の希望ですから。槍剣隊の後ろ、魔法隊の前でお願いします」
さすがに自分がこの騎士団で一番強い自負があるエメフィーは難色を示す。
だが、マエラのいう事も最もだ、とも理解している。
この騎士団はあの隊長会議の日より、エメフィーを守るための騎士団になったのだ。
「エメさま、マエラさまの言うとおりですぅ。エメさまはあたしが守ります。何しろ、あたしがエメさまを守る最も強い騎士ですぅ! えっへん!」
「………………うん」
シエラの若干のドヤ顔が気になったが、エメフィーは素直にそれに従う。
「いらっしゃいませエメさま~」
「……うん、ありがとう、アメラン」
やたら嬉しそうなアメランも気になるが、迎え入れてくれた彼女に礼を言う。
「エメさま~私実は~目覚めたんです~」
エメフィーが隣を移動しているのが嬉しいのか、アメランは親し気に話しかけてくる。
「……何を? もしかして、お尻を叩かれる事にとか言わないよね?」
「……え~?」
「あ、ごめん。そんなわけないよね?」
自分のおしおきに目覚めた、と勘違いして言ってしまい、エメフィーは顔が赤くなる。
「どうして~、分かったんですか~?」
「合ってたんだ! もうやらないよ?」
そうか、あの柔らかいお尻にはもう触っちゃ駄目なんだな、と思うと少しだけ寂しい。
「え~?」
「そんな切なげな目で見ても駄目! 王子は女の子にそんな体罰はしないんだよ」
王女ならいいのか、という話がなくもないが、エメフィーの中ではギリギリ問題ないようだ。
「私は構いませんよ~? いっぱいおしおきしてくださ~い!」
「構うよ! それよりもおしおきされないように真面目に研究してよ」
「……真面目にしなかったら、おしおきしてくれるのですか~?」
「研究費を削るよ」
「ひぃ~!」
涙目のアメラン。
この子がこんなに可愛く思えるのは、やっぱり自分が男の子だったからなんだろうなあ、とため息が漏れる。
マエラからはそれは悪い感情ではないと言われたが、どうにも不健全に思えてしまう。
自分が女だと思っていた時から同じ感情を抱いていたが、その時には可愛い女の子を可愛いと思うことに何の疑問もなかった。
これからは何を思うにしても「自分は男だからこう思うんだ」などと考えてしまうのではないか。
「そう言えばさ、アメラン」
エメフィーはそんな思いを振り切るようにアメランに話しかける。
「何ですか~? 私の好きなものは、お砂糖たっぷりのミルクティーと研究費です~」
「うん、君の好きなものは大体知ってるよ。そうじゃなくって、前からずっと聞きたかったんだけど」
「エメさまとつり合いが取れてる十六歳です~。結婚して~私に研究費とおしおきを毎日~」
「ミルクティーどこかに行っちゃったね。それよりもさ──」
エメフィーは一度言葉を躊躇する。
聞いてもいいものか、これまでもずっと迷ってきたことだ。
「あのさ、君のお父さんって、誰なのかな?」
「ほえ~? あんっ」
珍しく目の下にクマのないアメランが不思議そうに首を傾けて、馬から落ちそうになる。
「私の、お父さん、ですか~」
「うん、いや、知らないっていうなら別にいいし、興味本位だから答えてくれなくても──」
「知ってますけど~、秘密で~す」
アメランが笑って答える。
それは、言いたくないのか、それとも言えないのか?
それを聞くことは、アメランを大切に思っているエメフィーには出来なかった。
ここで第一章を終了とさせていただきます。
まずはここまでお読みいただき、ありがとうございました。




