第21話 自分の性欲を認めさせられる
「けど、多分マエラ一人知っていればよかった気がするんだけど、何かあったっけ?」
「殿下は大浴場などというものを考えるました」
にっこりと笑ったまま、語調を強めるマエラ。
これは責めるときの口調だ。
「殿下の裸体は私が必死に手を回してお隠しすることに成功しましたが、殿下お一人にお風呂に入らせるわけにはまいりません。おそらく抜け出して大浴場に来られたことでしょう。ですから見張りも兼ねて私が、そして、私だけでは殿下も怪しむでしょうから、隊長以上が入浴できることにして、シェラにも入ってもらいました。シェラも婚約者でしたから」
「他の隊長にはなんて?」
「何も言っておりませんし、来ても入り口で止められたと思います。それを殿下に聞かれたら、彼女たちは仲間と入りたがっているようだと言いました」
何もかもが完璧であり、それはマエラへの尊敬にもなるが、ここまで完璧に騙されていたと思うと腹立たしい。
「で、でも、いきなり婚約者とか言われても、僕も二人をそんな目で見たことがないしそれに、宰相閣下も知らなかったんでしょ?」
マエラの父である公爵は、現在ジュエール王国の宰相をしている。
「父上も式で初めて知ったことでしょう。ですが、これはモルディーン家にとっても願ってもない話。あの父が受けないわけがありません。それに、殿下が私たちを女として見たことがなかったというのは完全な嘘ですので、何の問題もありません」
「ちょっと待って? なんで嘘なのさ? 僕は本当にマエラをそんな目で──」
「見て、おられますよね? 殿下はご自分で女性だと思っていながら、まるで思春期の殿方のように私の身体をお求め頂きました。ですから、私はそれを捧げて参りました」
「え……いや……その……」
正直、そう言われると言い返すことは出来ない。
何しろ、裸のマエラに抱き着いたり胸を揉んだりすることがとても楽しかったのだ。
なんだか身体の芯に血がどくん、と流れたのだ。
その「楽しさ」は今思えば、性的な興奮だったと言い換えることが出来る。
「うう……」
そう考えると、自分のこれまでやってきたことがあまりにも恥ずかしくて泣きたくなってくる。
「殿下、殿下はもうご結婚も出来ます。殿下の性欲はとてもお強いようですから、私とシェラ以外にもお探しいたしますので、少々お待ちください」
「いや、ごめん、色々ごめんだけど、そういうのはもう少し先でいいからさ」
正直なところ、自分が男だったという事をまだ受け止めきれていないうちから、色々動きがあり過ぎて戸惑っているところだ。
途中からマエラがからかっているのは分っていたが、それでも何と言っていいのかわからない。
昨日まで同性同士の仲間だと思っていた二人が、実は異性で、しかも婚約者だったとは、思いもしなかったから、どういう距離感で話をすればいいか分からないでいる。
「分りました。では、これからのことを、隊長会議で話し合いましょう。隊長たちは集まるよう手配してあります」
「うん……あ! それより、ララ! あの子はどう思ったんだろう?」
エメフィーは、男嫌いの妹、ララフィーが、愛する姉が男だったと知ってどう思ったかがどうしても気になった。




