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少女騎士団は今日から僕のハーレムになりました  作者: 真木あーと
第一章 気さくな王女は男の子
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第16話 二歳違いの妹

「お姉さま!」


 廊下の向こうから幼い声がホール内に響く。


「ララ、危ないよ?」


 てててて、とドレスで走ってくるのは、エメフィーによく似た、妹のララフィーだ。

 ドレスは動きやすいエメフィーやシェラのような裾の短いものではなく、マエラのような長いドレスだ。

 エメフィーと同じ長い金髪を、本来王族にはありえないツインテールにして、そのテールを揺らして走ってくる。


 いつも転んでいるのにどうして学習しないんだろう、この子は、とエメフィーは呆れて、だが微笑ましく走ってくるのを見ている。


「お姉さまぁぁぁぁぁぁっ!」


「うわっ!?」



 二メートル先から大ジャンプ。

 飛びついてきたララフィーを咄嗟に受け止めるエメフィー。


 受け止めはしたが、いきなりのことにバランスを崩しかける。

 長身で鍛えているエメフィーだからよかったものの、これが他の団員なら巻き込まれて倒れていたところだろう。


「危ないって言ってるだろ? どうして僕の言うことを聞けないの?」

「だって、お姉さまなんですもの! お姉さまさまぁ!」


 理由になっていないというか、それが理由なら、僕はこの子になめられているか嫌われているな、と思えるララフィーの言葉。


 実際のところ、エメフィーは、この二歳下の妹に溺愛されていた。



 彼女はエメフィーの凛々しい姿が大好きらしい。


「全く。本当にララはお転婆だな?」


「お姉さまほどではないですわ」

「僕のは騎士だからね? こう見えて戦いに身を置く騎士なんだよ」

「そんなお姉さまが大好きですぅっ!」


 ララフィーは論理的は会話が出来なくなるくらいエメフィーのことが好きだ。

 彼女は女王や王配()の言うことも聞かないらしい。


「あのさ、凛々しいって人なら殿方にいくらでもいるだろ? どうして僕なんか──」

「殿方! 男!」


 ララフィーの表情が嫌悪と恐怖に塗り替えられる。


「ララが殿方を大っ嫌いなことくらいご存じでしょう! どうしてそんな意地悪なことを言うのですかっ!」


 今度はどん、と肩を押される。

 本気で怒っているというよりは拗ねている、と言ったところか。


「それはもちろん分かってるさ。でも、ララももう思春期だろ? そろそろ将来のことを考えなきゃ駄目だよ?」

「ララはずっと一人でいます。お姉さまと一緒に暮らします」


「いや、僕だっていつかは殿方を迎えるんだけどさ」


 ララフィーにはこう言っているが、実際のところ、エメフィー自身、男性と恋愛したり結婚したり、ということをそう現実のものとしてまだ考えてはいない。


 今は騎士団にいれば楽しいし、マエラやシェラとこうして一緒にいるのも楽しい。

 男性とはほんの時々話をするが、口説かれたりされても困る。


「そんなの嫌です! ララはお姉さまとずっと二人でいるんです!」

「あのさ、僕ら王族だからそういうわけにも行かないんだよ。僕らは血を後世に残していかなきゃならないからさ」



「いーやーでーすー! ララは結婚しまーせーん! お姉さまもしーまーせーんーっ!」


 ララフィーがぎゅっとエメフィーにしがみつく。



「ララ、我儘を言うんじゃないよ? 聞いたよ、ララが我儘を言うのは母上を困らせて縁談を持ってこさせないためって聞いたよ? 今はまだいいけどさ、もう少ししたらララも──」

「ぜったいに! 嫌ですっ!」


 涙目で、エメフィーを突き飛ばすララフィー。


「たた……」


 痛がるエメフィーを見て少し躊躇したものの、そのまままた走って行ってしまった。



「お疲れさまでした、殿下」

「……ま、しょうがないね。僕だって、あの年の頃は殿方のことなんて考えもしなかったからね」


「そうですか」

「ま、今でもまだ想像もできないけどね」


「でも、エメさまは──」

「シェラ」

「あ……」


 シェラが何かを言おうとして、マエラに止められる。


「何?」

「いえ、何でもありません。そろそろ行かなければ遅れます」


「あ、ちょっと」


 エメフィーは結局何も聞けず、会場に向かうことになった。

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