第14話 紅い瞳の参謀
「そういえばマエラって、まだ右目の奥が赤いんだね?」
ふと、隣にいるマエラの瞳を見て、光の加減で赤く光ることに気づき、言う。
「そうですね。昔はこれでよく殿下にいじめられましたが」
「そんなこともあったかな? いや、どうだったかな……?」
確かそんなことがあった気がする。
目が赤い、というのは魔王の目が赤かったことから不吉だと言われていたので、よく分かっていない頃は、お前が魔姫か、なんて言っていた気もする。
「けどさ、確かその時も言った何倍もの仕返しを受けてた気がするんだけど」
「そのような記憶はございません。二度と言わないよう進言した記憶ならありますが」
「うん、そうだね。一日中説教されたんだよね。それって僕からすれば物凄い仕返しだからね?」
「主観の相違、ですか」
「その一言で片づけちゃうんだ」
苦笑するエメフィーは、だんだんその当時の事を思い出してきた。
軽い気持ちでエメフィーが赤い目を攻め、基本エメフィーと同じ行動を取っていたシェラも同じ立場だった。
それでさっきエメフィーが言った通り、その日は一日中マエラは説教したのだが。
確か赤い目をさらに赤くして半泣きで説教されたのを思い出す。
今考えれば、三人仲良くやっていたのに、エメフィーの軽い言葉で、二人と一人に分かれてしまい、それが子供心に寂しかったんじゃないだろうか。
当時はエメフィー九歳、マエラ十歳の、完全な子供だ。
お互い、相手の心の内まで理解出来なかったのだろう。
ちなみにエメフィーはそれに懲りて目の事は言わなくなったので、言ったのはただの一度だ。
「うん、まあ、あれは悪かったと思ってる。今はそんなこと言わないよ?」
その時のことはさっきまで忘れていたくらいには覚えてはいない。
だが、いつも年長として、冷静でエメフィーたちを教える立場にいたマエラが、あの時初めてエメフィーの前で泣いたのだ。
だから、二度とマエラを泣かせないようにしようと、その気持ちだけは忘れることはなかった。
「なら、今は何とおっしゃっていただけますか?」
「そうだな、『世界中の誰もがそれを悪魔の目と呼んでも、僕だけはマエラの瞳は美しいと言おう』かな」
「殿下……」
マエラはぴったりとエメフィーに寄り添う。
「私は殿下にだけ美しいと言っていただければ、満足です」
「うん、それは僕もだよ」
そうは行かないことは重々理解している。
だけど、今この時だけは、三人だけの世界でいたい。
「………………」
「? 殿下、どうされました?」
エメフィーは、押し付けられたマエラの二の腕を掴む。
「本当、柔らかいね。マエラの腕」
「私は、鍛えておりませんから、筋肉がないのは仕方がありません」
「本当、マエラは女らしく育ってるよね? ここも」
「きゃっ!?」
エメフィーはマエラの胸の膨らみを軽くつかむ。
「おおおっ、またこれは……!」
シェラとはまた違う、弾力もほとんどない、完全に柔らかな肉。
それが全身に行き渡っているのが、マエラの身体。
その、完全な身体を前に、もうエメフィーは我慢の限界だった。
「マエラ、僕はもう! 僕はもうっ!」
「きゃぁぁぁぁぁぁっ!?」
エメフィーは裸のまま、マエラの全身を堪能した。
その後、半泣きで説教され、関係のないことまでついでにちくちく指摘されたので、子供の頃とは違う理由で、二度とするまい、と思った。