第12話 お風呂場での「女同士」のじゃれ合い
「っ!? ちょっと、マエラ?」
マエラはエメフィーの髪を下ろし、背後からぎゅっと抱きしめてくる。
裸同士の触れ合い。
それこそがエメフィーの求めていたものだが、流石に裸での抱擁となると話が違ってくる。
洗剤の流れ切っていない髪と、柔らかな胸の邂逅。
ぬるり、と滑り、マエラの体温を感じる。
「ですけど──」
耳元に聞こえてくる、マエラの囁き。
「この世にはそうは思わない者もおります。そのような者の前に、殿下の裸体を晒すことなど、私には出来ません」
「そ、そう……」
この意見にも反論くらいできる。
だが、今のエメフィーはそれどころではない。
何しろ背中にマエラの身体が密着してるのだ。
それは、昔からよくあることで、今更気にするほどの事でもない。
ないはずなのだ。
どくん……
だが、今日は少し様子が違う。
身体の一部の血流が、異様に強く流れる。
シェラやサイ、アメランの身体に触れてしまっていたのだ。
これまでもよくあることだったが、今日は全員に満遍なく触れてしまった。
彼女たちはそれぞれの道に才能があるだけでなく、女の子として非常に魅力的で、とても柔らかい。
そして、その最たるものが、マエラなのだ。
彼女は特に筋肉もないが、逆に全くないわけでもない、均整の取れた、より成熟しつつある大人の身体。
そして、その身体からはほのかに甘い匂いが漂ってくる。
エメフィーにはない、大人の女性の魅力。
マエラにしても十七歳で、エメフィーとは一年強しか違わないのだが、それ以上にかけ離れた魅力の差がその背に押し付けられている。
「も、もう……」
自然、息が荒くなる。
「殿下? どうかしましたか?」
「もうだめだっ我慢できないっ!!」
「きゃあっ!?」
エメフィーは後ろに寄り添っている裸のマエラに抱き着いた。
「もうっ! マエラってば、もうっ! むにゅーっ!」
エメフィーはただ、興奮状態で、全裸のマエラの上に乗りその胸に頬を擦りつけていた。
それは何と柔らかく、すべらかで、温かく、いい匂いなのだろう。
今日だけで色々な女の子に触れるのが我慢できなくなっていたが、その中でもマエラは別格だ。
エメフィーは全力でマエラの胸に擦りつく。
荒い息は、極限まで興奮している証拠だ。
「おやめください!」
「!」
しばらく無抵抗にされるがままだった、マエラは、少し強めの声でそう言った。
その瞬間、興奮していたエメフィーの頭が、一瞬で醒めた。
自分は尊敬するマエラになんということをしているのだろうか。
女同士とはいえ許されることではないだろう。
「ご、ごめん、なんだか我慢できなくて……」
エメフィーは反省したように、マエラの表情を窺う。
「……仕方のない殿下ですね」
マエラは少し乱れた髪を整えながら、微笑む。
「う、うん、ごめん……」
何もなく許されたエメフィーは少しだけ不安に思った。
何しろ、シェラの胸を揉んでいるところを見られただけで、叱られるのだ。
その本人に、それ以上の事をして、何もないというのはおかしい。
後で物凄く、怒られるのではないか。
そう考えると怖くて仕方がない。