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新・人類滅亡 - 短編集  作者: ポテトバサー
2/10

遭遇

それはあまりに唐突だった。


 今日は土曜日。


 僕は土曜日になると近くの川へと出かける。


 息苦しくない服に着替え、歩きやすい靴を履き、僕は玄関の扉を開けた。


 川へと続く道に(たたず)むパン屋。そこでレタスサンドとオレンジティーを買う。


 いつものことなので、可愛らしい看板娘さんがレタスオレンジセットを用意しておいてくれる。


 今度、映画に誘ってみるつもりだ。


 家からパン屋まで十一分。パン屋から川まで七分。変りゆく町並みを眺めながら歩いていると、銃八分という時間はあっという間に過ぎ去ってしまう。


ガタンゴトン…… ガタンゴトン……


 列車の足音が聞こえだしたら川まではもう少しだ。


 この小さな雑貨店を左に曲がれば、ほら土手が見える。


 ゴミ一つ無い綺麗な土手、その土手の階段をゆっくりと登る。


 土手というのは本当に素晴らしいものだ。


 気軽に登山の気分が味わえる。


 少し寂しげな街側の土手のふもと。その土手を登ってみると、どうだろう!


 広場では野球にサッカー、サイクリングにウォーキング、空飛ぶ円盤をくわえ楽しそうな犬諸君。


 活気に満ちた光景だ。


 太陽の光をうけて煌びやかに輝く川。その輝きの中から魚を釣りあげる釣り人。


 少しばかり川(しも)を見れば、鉄橋を力強く走る列車。


 その列車につられて向こう岸を見てみれば、人工的な美しさをもった大都会がそびえる。


 そして景色の果てには、ちっぽけな僕らを見守る雄大な山が、どっしりと腰をおろしていた。


「はぁ………」


 その光景に良い意味でタメ息がでる。


ビリビリッ…… カパッ……


 僕は旅人のように土手に座り、封を開けたレタスサンドを口に頬張った。


 新鮮なレタスはシャキシャキと歌い、オレンジティーは柑橘の爽やかな香りを運んでくる。


「………………」


 食べ終えた僕は、芝生の上に寝そべった。


 自然と空が目の前に広がる。


 秋晴れの清々しい空。雲が一つ二つと流れていく。


 僕の視界の右側から飛行機が飛んできた。


 近くでは大きい旅客機も、ここからは豆のように小さく見える。


 僕はおもむろに空へ手をかざした。旅客機は僕の左手の親指の爪ぐらいの大きさしか……


カンッ!


 小さな旅客機は僕の左手に当たった………


「えっ?」


 旅客機は煙をあげ急降下。


 僕はあっけにとられ、その旅客機を見つめることしか出来なかった。


 旅客機は更に降下を続け、(あし)の茂みに消えていき、最後に聞いたのは、ライターの火がついた時のような、ポッという音だけだった。

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