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惨蛇苦牢須

作者: 蒼峰峻哉

メリークリスマス! 蒼峰です。

そんな訳でクリスマス短編を書いてみました。

いつになくぶっ飛んだ内容のお話ですが、読んでくださるとありがたいです。

 今年もやってきたクリスマスの時期。子どもたちはさぞ、サンタクロースからのプレゼントを心待ちにしている事だろう。

 そう、サンタは本当にこの世界に存在している。しかも彼等はサンタ教会と言う物を設立し、一般人にしっかりと認知されている人気者達だ。

 今回は日本のとある町に設けられたサンタ教会と、そこに所属するサンタ達の仕事ぶりを、ほんの少しだけ覗いてみよう。




 クリスマス・イヴの昼。町の中心に建てられたサンタ教会『惨蛇苦牢須(さんたくろうす)』の中では、サンタクロース達が仕事の真っ最中。とても慌ただしく動いている。

「おいテメェらぁ!! きっちりプレゼントの仕分けは出来てるんだろうなぁ!!」

「へい、竜吾(りゅうご)兄貴!!」

 サンタと言うにはあまりに柄の悪い口調。明らかに暴力団、ヤクザの類にしか見えない厳つい外見をした男達は、紛れもなくサンタクロース。腰に銃やドスやらを装備しているが、彼等は間違いなくサンタクロースなのだ。もちろんサンタ服も全員着用している。

「おい、この袋に詰めるプレゼントが足りてねぇじゃねぇか! 代わりにテメェの指を詰めてやってもいいんだぜ!?」

「す、すいやせん!」

 竜吾兄貴と呼ばれる屈強な身体つきをしたグラサンの男の激で、周りの部下達はより一層作業の手を進める。

「町のガキ共が楽しみにしてやがんだ。適当な仕事は許さねぇぞ!」

「「へい!!」」

 順調にそして迅速に袋に詰められていくプレゼントを眺め、にやりと笑みを見せる竜吾。プレゼントの内容は、お馴染みのゲーム機(入手元不明)や野球のグローブ(素材不明)などなど。赤い染みが付いているように見えなくもないが、それはきっと気のせいであろう。

「兄貴! プレゼントにチャカ混ぜときやすか?」

「ふざけた事抜かしてんじゃねぇ! 現物じゃなくておもちゃの方だろうが!」

「そうイライラするんじゃねぇよ竜吾。サンタらしくねぇぞ」

 竜吾の背後から声をかけてきた初老の男。老いてはいても荘厳で覇気のあるその男に、その場に居た者達全員がその男に頭を下げる。

「オヤジ! どうしてここに?」

「お前らが騒がしかったもんでなぁ。ちょいと様子を見に来たんだよ」

「す、すんませんオヤジ」

「まぁここはお前に任せてるんだ。しっかり頼むぜ」

 それだけ言うと、再び奥の部屋に戻っていくオヤジ。竜吾含むその場の全員は改めてその背中に頭を下げ、それを見送った。

「おうテメェ等! まだまだやる事は山積みなんだ。しっかり働け!」

「「へい!!」」

 男達の荷分け作業はまだまだ続く――。




 そして夜がやってくる。サンタ達が最も忙しいのはこの時間帯だ。

「よしテメェ等! そりに乗り込め!」

 サンタ達はそれぞれが一斉にそりに袋を担ぎ乗り込んだ。そのそりを引くのはもちろんトナカイ。サングラスをかけて、何だかわっるい悪人面をしているトナカイ達だ。

「おう、行くぜ伴治(ばんじ)!」

「任せとけ」


 ただしトナカイは喋る。


 さて、そんなトナカイ達は喋る以外にも空を飛ぶ事が出来る。理由は分からないがそんな事が出来てしまうのだ。サンタ達はトナカイの摩訶不思議な力を使って空を飛び、子ども達にプレゼントを届けるのである。

「飛ばせ飛ばせー!!」

「スピード違反なんざ気にしてたら仕事にならねぇぜ!」

 空を飛んでいるのだからスピード違反の概念があるのかどうかは定かではないが、地上を走っていればまず確実に違反で捕まるような速度で空を駆けるサンタ達。

 そんなサンタ達と共に、自らも現場に赴こうと空を飛ぶ竜吾を、地上から追う者がいた。

 赤いランプを光らせ、サイレンをけたたましく鳴らしいてやってくる白と黒の車。そう、パトカーだ。そしてその中から拡声機を使い、竜吾へ怒鳴り散らす男の声。

「今年こそはお縄に付きやがれ、こんのヤクザサンタ共がああああああああああっっっ!!!!!」

「サツか……。しかもこいつは谷口(たにぐち)の野郎……。毎年懲りねぇな」

「待ちやがれ竜吾おおおおおおおっ!」

「俺達ぁしっかりサンタの掟に乗っ取って仕事をしてんだ! 何も問題はねぇだろう! テメェ等サツもそいつは分かってんじゃねぇのか!」

 サンタ達の活動はもちろん警察にも容認されている。普通ならば住居不法侵入に問われるプレゼントのお届けやその他諸々も、例外的に許されているのだ。

「サンタの掟に従っていても、お前らのやってる事は法律違反のオンパレードじゃねぇか!! サンタの仕事をしているだけで、実情はただのヤクザだろ!! 上のお偉い方が許していても、俺は見のがさねぇからな!」

「そういう事はしっかり証拠を押さえてから言ってもらいてぇな!」

 更に加速し、そりは一気にパトカーとの距離を開けた。

「あ、待ちやがれ!」

 負けじと追いかけるパトカー。だが竜吾の巧みなそり捌きの前に見事振り切られてしまった。

「ち、ちくしょう! これで終わりだと思うんじゃねぇぞ!!」

「そのセリフも聞き飽きたぜ」




 音を出さぬよう、迅速かつ慎重に目的の家――正確には子ども部屋に侵入する竜吾。気持ち良さそうに寝息を立てる少年の枕元には靴下が。

 竜吾はその靴下を持ち上げ、優しく笑った。

「こんな靴下にはプレゼントは詰められねぇぜ。坊主」

 竜吾はその靴下を枕元に戻し、その上に袋から取り出した携帯ゲーム機を添える。

「メリークリスマス。坊主」

 そう言い残すと、竜吾は優しい笑みと共に再び雪空の下に帰っていくのだった。

 その姿はまさしくサンタクロースそのものであった。

「よし、次はあの家だな」

 次の家に向かう竜吾。先ほどと同じく、誰にも見つからないように家内に入り込み子ども部屋に到達する。

「こいつは野球のグローブか」

 袋からグローブを取り出し、それを枕元に置く。

「メリークリスマスだ。坊主」

 そしていつものように外に戻る。

「見つけたぞ竜吾おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 そこに猛烈なスピードで突っ込んでくるパトカーの姿が。先ほど竜吾にまかれた警官、谷口の操るパトカーだ。

「まったく、しつけぇ野郎だ」

 竜吾は懐から拳銃を取り出すと。

「テメェにはこいつを送ってやるぜ」

 それをパトカーのタイヤに向けて発砲した。

 火薬の弾ける音が響き見事タイヤに命中した弾丸は、当然のようにタイヤに穴を開けパンクさせる。

「うおっ!? バカじゃねぇのお前!?」

 とっさの判断でブレーキを踏み、なんとか事故になるような事だけは免れた谷口警官。そんな彼を尻目に、竜吾は次の目的地に向かってそりを走らせるのであった。

「鉛玉のプレゼントだ。ありがたく思いやがれ」

「そいつはストレートに犯罪だろうがっっっ!!」




 翌朝。今頃子どもたちが枕元に置かれていたプレゼントを発見し、喜びの声をあげているであろう時間帯。『惨蛇苦牢須』の構えられた町と隣町との町境に、それぞれの町のサンタ達が集結していた。

 毎年、近隣のサンタ教会同士は交流を深めるためにプレゼント交換をするのがサンタ達の掟であり、それは彼等『惨蛇苦牢須』の者達でも変わりない。

「早くからご苦労さんです。皆さん方」

「い、いえ。そちらこそ」

 竜吾達に気押されてしまっている隣町のサンタ達。もう分かっているとは思うが、竜吾達はサンタとして異常であるからだ。普通に考えればタチの悪い冗談みたいなものともいえる。

「そ、それではプレゼント交換を行いましょう」

 そう言って隣町のサンタクロースが差し出してきたのは、十数万円相当の食材達。『惨蛇苦牢須』はそれなりの大所帯のため、食費がかかると言う事を聞いた隣町サンタの計らいだ。

「こんなに貰っちまって、ありがてぇ限りだ。礼と言っちゃなんですが、俺達からはこいつを」

 そう言って竜吾達が差し出したのは大量の銃、そして謎の白い粉……。

「あ、あのー……。こ、これは?」

「そいつは護身用に持っておくと役に立つでしょう。安心してくだせぇ。使い方さえ間違えなけりゃ危険な事にはならねぇ」

「こ、こっちの粉は?」

「疲れた時にでもそいつを飲むといい。疲れが嘘みてぇに取れる」

 一気に顔が青ざめていく隣町のサンタ達。彼等の考えている事は、きっとこれを呼んでいる皆さんの考えている事と変わりないはず。

 そこにやってくる聞き覚えのある声。

「わははははははは! バッチリ写真に収めてやったぞ!」

 カメラ片手に物影から飛び出してきたのは谷口警官だった。

「現行犯だ現行犯! 言い逃れは出来ねぇぞ!」

 大笑いしながら駆け寄ってくる谷口警官。竜吾はそんな彼を見て一言。

「何の話をしてやがるんだ?」

「今更シラを切ったってなんも変わらないからな! 銃にクスリ、どっちもしっかり写真に収めてるんだよ」

 その返答に竜吾はため息をついた。

「テメェ勘違いしてやがるぜ。おら、その目でしっかり確かめやがれ」

 竜吾は隣町のサンタに渡した銃と粉を一つずつ手に取り、それを谷口警官に向けて投げつける。

「お前らが渡したモンなんだから確認するまでもないだろうが……。ったく……」

 そうしてまずは銃をチェックする谷口警官。その顔がぴたりと固まった。

「そいつはただのエアーガンだ。ちっとばかし威力がある代物だが、使い方さえ間違えなけりゃ危険はねぇ」

「そ、それならこっちは……!」

 谷口警官は薬物検査の試薬をその白い粉に用いる。だが結果は――。

「ち、違う……」

「そいつはただの栄養剤だ。なかなか高い品だが、その分効果は保証できる。サンタの仕事は疲れがたまるんでな」

 自信満々だった谷口警官であったが、みるみるうちにその態度は小さな物になっていく。

「これで分かったろう。テメェの勘違いだったってよ」

「く、くそっ……。いつか絶対に証拠を掴んでやる……」

 そんな捨て台詞を残し、すごすごと帰っていく谷口警官。竜吾はその背中を見ながら再度ため息をついた。

「ったくよぉ、邪魔しやがって。すいやせんね、皆さん方」

「い、いえ! お気になさらず。このプレゼント、ありがたく貰っていきます」

 何やら安堵の表情を浮かべている隣町のサンタ達。自分達に渡された品々が、やましい物ではないと分かったのだから当然の事だろうか。

「それじゃあ皆さん方。これからもお願いしやす」

 こうして無事、サンタ達のプレゼント交換は終了したのであった。




「ふぅー……。今年の仕事もこれで終わりか」

 煙草をふかし、椅子に腰かける竜吾。その隣にオヤジが現れ、同じく煙草をふかしながら隣に座った。

「お疲れさん竜吾」

「オヤジ……。お疲れさんです」

「どうだった。今年のクリスマスは」

「相も変わらず騒がしいモンでした」

 竜吾の言葉に、オヤジはくくっと笑う。

「そこが良いんじゃねぇか。年の末に、大人も子どもも同じようにはしゃいでやがる」

「えぇ、違いねぇ」

 二人して同じように煙草をふかせ、同じようにくくっと笑う。

「来年もよろしく頼むぜ竜吾」

「えぇ、お任せを」

 二人はそのまま、のんびりと煙草を吸い続けるのであった。




 さて、ここまでサンタ達の仕事ぶりを紹介してきたが、いかがだっただろうか? 彼等は一風変わったサンタ達だが、やっている事は普通のサンタ達と同じ。それは子どもたちにプレゼントと夢を届ける事であり、決してシノギがどうとかカチコミがどうとかそういう世界の人間ではないのだ。

 人は見かけによらない。皆さんもその言葉をしっかり胸に刻んで、日々を送ってみるといいだろう。




「……待てよ? 俺のパトカーをパンクさせた時に撃った銃、あれって本物だった気が」

 だがタイヤは新しい物に替えてしまったし、証拠になる弾丸も見つかっていない。

 谷口警官は警察署で独り、わなわなとふるえ叫ぶのであった。

「お、覚えてやがれええええええええええええええ!!!!」


さてさて、いかがでしたでしょうか。

なんと言うかこんなもの書いてよかったのだろうかと、自分でも思うような内容の小説だったと思います。

正直どうしてこれを書こうと思ったのかは分かりません。書いてて「何だこれ」と何度も思いました。

ですが、何だか笑ってしまうような内容には出来たのではないかな、と思います。いや、分かりませんけどね。

まぁこういったぶっ飛んだネタを書くのが僕のスタイルの一つにもなっているので、これからも意味の分からないネタの小説を書くと思いますがどうかご勘弁を。


それでは皆さん、良いクリスマスをお過ごしください!

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― 新着の感想 ―
[一言] 柄は悪いけど良い人って何かいいですよね。 そしてこのヤクザサンタ達が裏で色々とアカン事をしていないと信じたい。 例え実銃を使っていたとしても……ッ!
2013/12/26 16:38 退会済み
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