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俺のトモダチ事情。  作者: 日向栞
【嘘つき彼女、赤い傷。】
9/19

気になること。

 次の日、部活後に大急ぎで昨晩手に付かなかった宿題をやっていると、急にノートが暗くなった。

 見上げると、そこにはニヤニヤと笑う実咲の姿がある。


「んだよ」

「別に~、宿題わざわざ取りに来たのにやんなかったんだーバカみたいー、とか全然思ってないよ?」

「……思ってるんだな?」

「なぁーんのことだか、分かりませんねー、ぷぷぷっ」

「あー、そうですか」


 ココロの声、駄々漏れですけど?

 片手で口元を隠しながら、愉快そうに笑う実咲を睨みながら、俺はノートに取り掛かる。

 すると、実咲はそのまま、しゃがみこんで机に顎を乗せ、まだ笑いながら俺を見ている。

 ちら、と机にかけられた手を見るが、手の甲しか見れない。


 中学生とか、そう……所謂思春期は、とくに自己顕示欲が強くなると言う。それが“リスカ”に繋がるとも。……そう、テレビで言っていた。ぶっちゃけ“自己顕示欲”の意味も分からない。


『葉月はね、優しすぎるんだよ』


 昔、そんなことを言われたことがあった。ちょっとしたことを気にして、心配して、悩んで。気づいたら余裕が無くなっていて、周りが見えなくなって、自分の首を絞めていて、苦しむ。

 その言葉は、どちらかというと薄情な奴だと思っていた自分の眉を顰めさせるのには十分だった。それが“おせっかい”だということには、数年経ってから自分で気づいた。


 気づけば、かなり時間が経っていたらしく、読書タイムの号令をかける声が聞こえた。

 それを聞いて、実咲が凄い勢いで机に手を置き立ち上がる。

 立ち上がった反動で机が揺れ、字がぶれる。……何すんだよ。


「ほじゃねっ」


 しゅたっ、と音がついてもいいんじゃないか、というほど勢いよく実咲が手を振り上げたとき、見えた。


 赤い、線のような傷……と、赤く色づいた肌が。


 何か違和感を感じたけれど、それが何かは分からなかった。


 それから、流石に実咲の傷について考えることはできなかったし、見ることもできなかった。

 普通にそんな余裕は無かったし……なんでか菜乃花の視線が痛かったから。

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