悩む。
アレは、やっぱり……。
家に帰って、飯を食べて、自室に戻ってからも俺はずっと、もやもやとした気分だった。
どうしても、今日見た実穂アレが気にかかる。おそらく、傷だ。
普通にどこかの角で擦ってしまったり、切ってしまっただけ、という可能性もある。
そもそも傷だったのだろうか? 手が滑って赤ペンを引いてしまったとか、赤いゴムとか。
……手が滑って手首に線? どういう状況だよ。それに、赤いゴムは拘束で禁止されている。
なにより“左手首”という場所がよからぬ想像をさせる。
明日、聞いてみようか? いや、でも……俺はそこまで彼女と仲がよかったのか?
そもそも……あいつはそういうことをする奴か? 分からない。数ヶ月彼女を見てきた限り、そんな悩みがありそうだったか? 何か苦しそうだったか? いや、それだけで切るとは限らないし……ていうか切ってると断定してたらダメだ。
悩みだしたらきりがない。
俺は唸りながらベットの上を転がった、途端壁に頭を強打する。
「い、っ~~~!?」
声の出ない悲鳴を上げながら、逃げるように転げると、今度はベットから落ちた。
……ツいてなさ過ぎだろう。今日。
ずれた眼鏡を直すと、俺はため息をつきながら机の前に行き、今日取りに行った宿題のノートを開く。
けれども、どうしても彼女のことが気になってしまい――――結局、手に付かなかった。
取りに言った意味がないじゃないかよ。そんなことも思ったが、悩みだすと、もうどうしようもなかった。